⑩TMS研メルマガ一覧表

メルマガ第49号

御社は従業員に業務改善・改革を「押し付け」ていませんか?

 今から15年ほど前、『TPS(トヨタ生産方式)』が一世を風靡したことがありました。多くの会社が『TPS』の本質をよく理解することもせずに導入し、失敗していきました(一番有名な事例は郵便局でしょうね)。かく言う私の前職の親会社(業界3位、12,000人規模)も、ロットをまとめてドカンと作る『ダンゴ生産』が正解の装置産業でありながら組立産業の『TPS(同期生産)』を導入し、盛大に失敗しました(その3年後、社名消滅)。

 トヨタに勤めた経験があり、なおかつヒマそうだとの理由から、親会社の基幹工場で開催されたTPSセミナー(全10回)の受講を命ぜられた私は、何回目かのセミナー終了後にTPSインストラクターの先生に話しかけてみました。私がトヨタ経験者であることに気を許したのか「私はこの会社の工場を指導するのはここが2箇所なんですが、教えれば教えるほどここにはTPSが向かないことが分かり、本当に悩んでいるんですよ…」と先生はぼやいてました。

 装置産業である親会社は溶解炉や予熱の必要な押出工程を持っており、自動車組立工場のようにスイッチ一つでライン稼働開始というわけにはいかないのです。ここにTPS講師の悩みの根源がありました。

 上場以来の最高利益を計上した翌年に初の赤字決算となり、その後3年連続赤字に苦しんだ親会社の経営者が会社存続を賭けて挑んだ『TPS(同期生産)導入プロジェクト』は、トヨタ系コンサル会社を招聘し数億円を投資したにも関わらず、結局同社を救うことはできませんでした。

 私は15年ほど勤めた前職で、様々なプロジェクト(トップダウン活動)の失敗を目撃しましたが、今考えるといくつかの共通点があります。①役員が発案し決定する②外部コンサルを招聘する ③講演の後キックオフ大会を開催する ④毎月フォローアップ会議を開催する。 これがプロジェクト失敗への定番コースでした。一見ごく普通に見える上記①~④のやり方には、一体何が欠けているのでしょうか?

 前述の親会社の大プロジェクトが失敗した理由は「TPSは装置産業に不向き」の他にもう一つあります。それは肝心要の従業員の「同意と納得」が全く得られてない状況で、同プロジェクトを開始したことです。これではプロジェクトに「魂」が入るわけがありません。

 親会社の経営陣の誤算は「自分たちがこれだけ真剣に検討したプロジェクトに「人・物・金(経営資源)」を付けるのだから、きっと成果を上げるだろう」という考え方にありました。この考え方の致命的欠陥は、『従業員の気持ち』に全く配慮が及んでいないことに尽きます。

 私だったら最初に無記名式の『従業員アンケート』を実施し、従業員の仕事上の悩みや問題を定量的に「見える化」し結果を分析した後、それらを解決する活動として『TPS(同期生産)』導入を提案します。つまり従業員自身の口から「私たちは『TPS(同期生産)』導入を必要としています」と言わせるわけです。もっとも装置産業を熟知した同社の従業員がそんなバカなことを望むわけがありませんから、このプロジェクトは廃案となり、同社も他社に吸収されずに済んだかもしれません。

 「プロジェクト開始前に従業員の声を聴く」たった一手間ですがこれをやるのとやらないのとでは、プロジェクトの成果にそれこそ天と地ほどの開きが生じます。私の敬愛するコンサルタント、竹内富雄先生も同様のことをおっしゃっています(添付『関係者が乗り気じゃない改善は失敗する』参照)。

 ちなみに私はいままで数社のコンサルをさせていただきましたが、すべて成功しました。その理由は簡単です。コンサル開始前に無記名式アンケートを実施し、従業員の仕事上の悩み・お困りごとの解消プロジェクトとして業務改革を行ったからです。なぜ他のコンサルタントがこの方法を取らないのか不思議でなりません(理由は大体想像がつきますが…)。

 トップダウン活動にありがちな「やらされ活動」ではなく、従業員が心の底から「やりたい活動」に取り組んだとき、私の予想をはるかに超える成果をあげた事例を数回目撃しました。コンサル冥利に尽きる瞬間です。

 トップダウン活動を失敗(やらされ活動化)させるのも、成功(やりたい活動化)させるのも、事前に「従業員の声」を聴くか否かによります。

 御社は従業員に業務改善・改革活動を「押し付け」ていませんか?

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