⑩TMS研メルマガ一覧表

メルマガ第8号

御社はスタッフの「改善魂」を会社業績向上に活かしていますか?

 我が国日本は太平洋戦争末期B29による爆撃により東京・大阪・名古屋の大都市の他200以上の都市が損害を受け、各地の工場は壊滅的な打撃を被りました(重化学工業の生産力が90%もダウンしました)。私の生まれ育った茨城県日立市もその一つで、小学校の先生から当時の空襲や艦砲射撃の恐ろしさについてよく聞かされたものです(私の卒業した小学校の校庭に、その時亡くなられた方の遺体数百体を並べたとのことでした)。

 戦後の日本の工業はまさしく「焼野原」からスタートした訳ですが、1950年に勃発した朝鮮戦争による特需景気が追い風となり猛スピードで復興、デミング、ジュラン両博士の品質管理指導によりTQM活動がブームとなりました。その中から「QCサークル活動」「改善提案活動」という日本独自の活動が生まれ、製品の品質向上に大きく寄与したことは皆様ご存じの通りです(なんだか歴史の授業のようですみません)。

 それから半世紀後、前職の品質管理部門で「QCサークル活動」「改善提案活動」両活動の事務局を私が仰せつかった頃には、どちらもすっかり形骸化し「やらされ活動」化していました。はっきり言って、従業員から見て何の魅力もない活動に成り果てていたのです。「QCサークル活動」をどのようにしたかはまた別の機会にお話しするとして、今回は改善提案活動改革についてお話ししたいと思います。

 従業員から見捨てられかけていた改善提案活動をどうしたらよいか私は必死に考え、他社事例に学ぼうと機会を見つけては他社へ見学に行きました。ただし改善提案に関してはなぜかしらこれといったセミナーや書籍がなく、㈱日本HR協会さんという大阪の会社だけが頼りという有様でした。ただし同協会の出版物は改善の考え方や改善事例集が主で、改善提案制度についてはほとんど触れられていません。そのためこの問題の解決策は、私自身がない知恵を絞って考えるしかありませんでした。

 まず手始めに現状の問題点を列挙してみたところ、出るわ出るわで活動が低調な理由は私にもすぐに分かりました。前任者がどうしてこんなになるまで放っていたのか不思議なくらいでした。ここで当時私が気付いた改善提案活動の問題点の一部を皆さんにご紹介します。ぜひ皆さんの会社の改善提案活動と比較対照してみてください。

【私のいた会社の改善提案活動の問題点】

  1. 実施率が低い。
  2. 一部の人の活動となっている。
  3. 内容のレベルの差(バラツキ)が激しい。
  4. 改善効果を金額で算定していない。
  5. 優れた改善事例の全社横広めがなされていない。
  6. 褒賞制度に魅力がない。
  7. 改善提案シートの書式に問題がある(改善前・改善後のみで第三者が理解できない)
  8. 改善提案制度の会社規程を誰も知らない。
  9. 各部署に活動推進責任者がいない。
  10. 提出されたシートに対する職制のコメントがほとんど記入されていない。
  11. 事務局から提出者へのシートの返却スピードが遅い(最長40日)。

 これで問題点の「一部」ですから、もし改善提案活動が人間だとしたら近日中に死にそうなレベルですよね(苦笑)。ここまで来るともはや改善(薬)では追いつかず、抜本的な改革(外科手術)が必要となります。

 熟慮の末「私言う人、あなたやる人」の改善提案から「職場の問題点の対策を自分で考え実施する」改善報告活動に代えることに決断、関係者へのヒアリング調査実施後全社へ周知し、新活動を開始しました。その後、改善報告してくれた人を喜ばせる諸施策を徹底して行った結果、初めは冷ややかな視線で見られていた当活動も1年後には私の想像をはるかに上回る「改善ブーム」のような状況にまで発展しました。特に事務員やパート従業員、派遣従業員、シルバー人材センター派遣の年配者から報告が相次ぎ、ついには出入りの工事業者さんからも「私たちもぜひこの活動に参加させてください!!」との要望を受けるまでになりました。

 その時私は「改善提案活動が低調なのは従業員の問題ではない。制度と事務局自身の問題だ。この月間提出件数、実施率、改善レベル、従業員の熱意を見ろ。どこに出しても恥ずかしくないじゃないか。やはり「改善」は日本人のDNAに生きているのだ!!」としみじみ感じたものです。

 最後に一つ、エピソードをご紹介して今回のメルマガを終わります。ある日総務部に退職の挨拶に来られた60代後半のシルバー人材センター派遣の年配の男性が、帰り道に私のところに立ち寄ってくれ次のような話をしてくれました。

 「私は定年退職後シルバー人材センターを通して何社かで働かせてもらいましたが、どこに行っても本当につまらない仕事ばかりで全然やる気が起きませんでした。でもこの会社に来たら改善報告活動があり、私たちにも作業改善をさせてくれ、その成果も正当に評価してもらえる。事務局がわざわざ私を訪ねて来てくれ、褒めてもらえる。事業所全体朝礼席上で、工場長さんから表彰も受けました。私は来年70歳なので、こちらが人生最後の職場となるでしょう。最後にこんなに楽しく働かせてもらい、思い残すことなく職業人生を卒業できます。本当にありがとうございました」

 皆さんの会社では、従業員の「改善魂」を会社業績向上に活かしてますか?

Sitemap

Contact us

お気軽にお問い合わせください。
PAGE TOP
PAGE TOP