⑩TMS研メルマガ一覧表

メルマガ第30号

御社はコンサルタントの「使い方」をご存知ですか?

  総務部で過労死しかかった(時間外労働月300時間超)私は、退院後社内でもっとも暇な部署と目されていた品質管理グループというところに異動となりました。そこではリストラ中に休止していたQCサークル(職場小集団活動)を再開させる仕事を担当しました。1年間の熟考の末、形骸化の著しい同活動を断念し、5S(整理整頓)サークルとして再出発させることとしました。そして5S活動のノウハウとスキル習得および指導してくださる先生選びの2つの目的で、私は東京で6回5Sセミナーを受講しました。その上で、全社5S活動開始に先立ち何かインパクトのあるイベント開催が必要と考え、5Sの分野で有名なA先生に依頼することとしました。

  A先生は私が受講したセミナーの講師でもあり、受講後メールのやりとりをして人間関係を築いてありました。工場長以下約70名を前に5Sをテーマとした講演を依頼し、前金で30万円振り込んで来ていただきました。事前に工場を巡視され、午後一から始まった講演はすごい迫力と説得力で、事後行ったアンケート結果でも非常に満足度が高いものでした。おかげでその後私が指揮をとった全社5Sサークル活動も、随分とやりやすくなった記憶があります。

  しかし私はA先生に5Sのコンサルを依頼しようとは思いませんでした。あくまで5Sサークル活動開始に際しての『抵抗勢力』排除に使っただけでした。工場長は「どうするんだ角川、A先生に頼むか?」と言ってくれたのですが、私は断りました。自分でも活動を指導できる自信があったこともありますが、本当の理由は偶然客先にA先生の5S指導を受けた工場があり、そこを見学したことにありました。

  オーナー経営者に招聘されたA先生は2年間思う存分5S指導されたとのこと(同社事務局談)でしたが、指導終了後前より5S状況は悪くなったとのことでした。私の目にも5Sをやった痕跡は見えるものの、どうして定着しなかったのかすぐには分りませんでした。その後しばらく考えて気づいたのは、同社の5S活動はオーナー経営者と敏腕コンサルタントによるいわば究極の(従業員から見て)『やらされ活動』だったということでした。

 抵抗した人(4名)はクビ、という有無を言わせぬ強引な活動推進に対する従業員の対応は、指導後の5S活動放棄でした。この事例を見た私が5Sサークル活動指導に際しとった方法は「進捗をチェックはするが、活動を強制はしない」という緩いものでした。その結果、活動を最終ステップまで完遂したサークルは20%でしたが、その後奇跡が起きました!! 課長方針で5S活動に参加しなかった某工場で自発的に5S活動が始まり、事業所内で一番汚く顧客の工場見学ルートからも外されていた某工場が、見違えるようにきれいになったのです!! 私はこの事例から、従業員が心からやりたいと思って行った活動の成果のすごさを知ることが出来ました。

  さてここまでお読みになって皆さんは、この2つの5S活動事例についてどのように思われましたか? 2つの事例の一番の違いは、『従業員の気持ちを尊重したか否か』にあります(『従業員性善説』と『性悪説』の違いとも言えます)。

 コンサルタントは確かにその分野に関しては卓越したノウハウと経験を持っています。しかし、そのスキルも使いようによっては『薬』になるどころか『毒』になってしまうのです。 それでは一体どうしたらコンサルタントを有効に活用できるのでしょうか?

 それはコンサルタントに問題解決を『丸投げ』しないことに尽きます。コンサルタントを医者と考えるとこのことは容易に理解できるはずです。どんな名医といえど、直る気のない患者は直せないのです。

  コンサルタント(医者)は、第三者の視点から客観的にクライアントを観察(検査)し、組織(人体)のどこにどんな問題があると指摘(診断)してくれます。それを素直に受け入れることがファーストステップです。次に問題点の解決方法(治療方法)を提示してくれるでしょう。問題は次の『問題解決をだれがやるのか?』です。

  本当にマンパワーが枯渇している会社の場合、コンサルタントが陣頭指揮を執ることもありますが、これでは組織内に人材が育たず、一度は解決しても再発する可能性大です。通常は事務局を設置し、活動の指揮させることが多いようです。

 さてここが実は重要なポイントなのですが、事務局がその名の通りコンサルの指示で事務的に活動するか、コンサル不在の時に『社内コンサル』として指導できる知識とノウハウを吸収しようと意欲的に勉強するかによって、高い費用をかけたコンサルティングの成否を分けるのです!! ということは、コンサルタントとして一番重要なことは、クライアントの組織内に自分の分身(社内コンサルタント)を育成すること、とも言えます。

  私は前職在籍時に、色々なプロジェクトが始まるたびに招聘されるコンサルタントとその事務局に指名された社員(部・課長)を横目で見てきました。そして巨額な費用を投資したにも関わらず、無残に失敗していくさまをつぶさに観察していました。私の見たところ、事務局が「事務的」だったプロジェクトはすべて失敗しました。コンサルタントも社内コンサル育成に消極的に見受けられました。

 そのような訳で、数多くの失敗事例を見てきた私が現在コンサルティングを請け負う時は、以下の事項を必ず実施しています。

  1. 最初に無記名式従業員アンケート実施し、従業員が何に困っているか調べる。
  2. アンケートの集計・分析・対策案をまとめたレポートを従業員全員に周知する。
  3. 事務局を選ばせてもらう。
  4. 事務局はプロジェクト専任としてもらう。
  5. 事務局の査定は私が行う。
  6. 事務局に徹底的に教育する。

 一見独特にも見える私のコンサルティングのスタイルは、実は前述の失敗および成功事例から編み出したいわば『コンサル必勝法』なのです。また、そうしないと私の指導が終わった時に前述のA先生の5S指導事例のようになるからです。

  今回私はこのメルマガを執筆する前に、前職の友人に私が指導したいくつかのプロジェクトが現在どうなっているのか確認してみました。その結果、驚くべきことに私(コンサル)がいなくなって5年が経つというのに、そのほとんどが継続されていました!! (5S活動、改善報告活動、危険予知訓練等)。コンサル冥利に尽きます。

 私のやり方(社員教育)は決して早く問題解決する方法ではありませんが、絶対にリバウンドしないので最終的には早く安く解決すると言えるでしょう。何より社内に人財(社内コンサル)が育つので、会社経営が長期的に安定します!!

 御社はコンサルタントの「使い方」をご存じですか?

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