⑩TMS研メルマガ一覧表

メルマガ第128号

御社はいつまで社員の「キセル乗車」を放置するおつもりですか?

 今では当たり前の存在となった鉄道の『自動改札機』ですが、その開発は苦難の連続でした。営団地下鉄有楽町線では、一度設置した自動改札機を全台撤去したほどです。当時の技術者の苦労はwikipediaやプロジェクトX『通勤ラッシュを退治せよ』で偲ぶことができます。

 自動改札機の開発が始まった1970年代は高度成長期の真っただ中で、人口も増加の一途でした。大都市圏への集中も進み、鉄道各社は①路線の延伸・複々線化 ②車両の高速化・長編成化、等の対策を打ちました。それでも追いつかず、ターミナル駅では乗客を車両に駅員が押し込んでいました。その乗車率はすさまじく、『通勤地獄』と称されました。車内の圧力で肋骨が折れる人や気絶する女性が出るほどでした。

 そこで鉄道会社が着目したのが『人の流れ』でした。流れをもっとスムーズにすれば、より多くの乗客を輸送できるだろう、と考えたのです。そこで発見されたボトルネックが『改札口』でした。当時は駅員が改札口に立ち ①切符を確認しハサミを入れる ②定期券を確認する、等の業務にあたっており、改札口の前は長蛇の列でした。そこで鉄道会社は改札業務の自動化に取り組みました。

 技術者の汗と涙により完成した『自動改札機』でしたが、当初その売れ行きは芳しくありませんでした。1台1,000万円という値段に「これを設置してそれに見合う費用対効果があるのだろうか?」と経営者が二の足を踏んだからです。当時の1,000万円は、地方都市で戸建て住宅が買え、十分なおつりがくるほどの金額だったのです。自動改札機の設置効果は、乗車人数向上、人件費削減 (改札口の無人化) がありますが、それでも1台1,000万円に見合う価値があるかどうかは微妙な問題でした。

 そんな中、首都圏の某私鉄が自動改札機の全面導入を決断します。このニュースに鉄道業界は震撼します。この経営判断は、下手をすると会社をつぶしかねないほどリスキーなものだったからです。さて某鉄道会社の決断は「吉」と出たのでしょうか? それとも「凶」と出たのでしょうか?

 その答えは導入初日に出ました。いきなり運賃収入が激増したのです!! そして競合他社が注視する中、巨額の投資金額をわずか3ヵ月で回収してしまいました。それを知った鉄道各社が一斉に自動改札機導入に転じたことは言うまでもありません。これを開発した立石電機(現オムロン)が大儲けしたこともご想像の通りです。そうして有人改札口は今日、過去のものとなりました。

 ところで改札業務の機械化だけで、なぜ運賃収入が激増したのでしょうか? 自動改札機導入日に乗客数が激増したのでしょうか? それとも運賃値上げを行ったのでしょうか?

 その答えは「キセル乗車の根絶」にありました。人間の目によって定期券を確認していた時分は、A駅からZ駅まで毎日通勤する人が、①A駅-B駅 ②Y駅-Z駅、の2枚の定期券購入によりB駅-Y駅間の無銭乗車が可能でした。これを摘発するにはB駅-Y駅間で車掌による車内検札しかなかったのですが、乗車率200%で身動きすら困難なラッシュアワー時に、そんなことができるわけありません。鉄道各社ともキセル乗車の存在は認識していたものの、その損害金額については想像の域を出ず、まさしく「神のみぞ知る」でした。

 ところが『自動改札機』という名の「神」が各駅に降臨したことにより、『キセル乗車』という「悪魔」は追い払われました。その結果、驚くような増収を鉄道会社にもたらしました。いままで見えなかったキセル乗車による損害金額を知ったとき、鉄道関係者はどう思ったでしょうか? キセル乗車をする「犯罪者」が乗客の中に多数存在していた、という事実を知ってしまった彼らは、「乗客性善説」から「乗客性悪説」に変わったことでしょうね。

 世界で群を抜く民度を誇る日本人ですら、実態はこの有様です。大半の人間は、誰かに監視してもらわないと往々にして道を踏み外す弱い存在である、ということがこの事例から我々が学ぶべき教訓ではないでしょうか?

 鉄道オタクでない皆様、ここまで辛抱強くお付き合いいただきありがとうございました。ここからいよいよ本論です。自動改札機導入で発生した利益こそ「管理利益」に他なりません。本業の売上・利益率が同一でも、組織内に潜在する「埋蔵金」を発見し掘り起こせば「管理利益」として財務諸表に計上でき、会社業績を大幅に向上させることができます

 そんな管理利益を取りこぼしている会社は40年前の鉄道会社だけではありません。現在でも、社内に潜む埋蔵金の存在に全く気付かず、管理利益を取り逃がしている会社が日本には星の数ほど存在します。しかも競合相手である欧米企業は半世紀前から管理利益を計上し、高い利益率を誇っているにもかかわらずです。これでは製品・サービスで勝っても、経営で負けてしまいます。

 10/6(水)に開催されたセミナーは1年ぶりとなる会場セミナーでした。私は、担当者間・月間・部署間の3つの業務量アンバランスを平準化して得られる管理利益を実額で計算した資料を新たに用意し、当日セミナーに臨みました。

 「技術開発グループ(10名)の担当者間の業務量アンバランス平準化で得られる管理利益 (超過勤務に支払っている賃金プラス非稼働時間に支払っている賃金)は、年間で2,123万円になります。これには労働基準法で定められている残業割増(25%)、休日出勤割増(35%)を含んでいませんので、実際には2,500万円程度となります」

 資料をスクリーンに映し説明すると、それまで和やかだった会場の雰囲気が一変しました。全受講者に一瞬にして緊張感がみなぎります。全員がシーンとして画面の資料を食い入るように見つめています。3分間の沈黙の後、次の事例解説に移りました。

 「次は月間の業務量アンバランス平準化で得られる管理利益です。AIOS標準ver.の一番下の赤文字で表記している過不足工数が元データです。繁忙月の仕事を業務量の薄い月に前倒しして実施した場合に得られる管理利益は、年間772万円です。これも実額は1,000万円程度でしょう」

 「最後にお見せするのは部署間の業務量アンバランス平準化で得られる管理利益です。設計・製造・品質保証の3部署で作成しました。繁忙部署に業務量の薄い部署が人員を貸し出すと、繁閑の差がかなり是正できます。そうして得られる管理利益は年間663万円です」

 「以上、①担当者間②月間のアンバランス是正により、10人の部署で3,500万円の人件費を圧縮できます。これは今日まで「ドブに捨て続けてきたお金」です。この是正により業務品質は下がるどころか、むしろ向上します。しかもこの管理利益は、会社の売上や利益率に関係なく計上できる点がポイントです。皆さんが気づいてアクションを起こしさえすれば、即得られる利益なのです」

 この説明を聞いた受講者は全員凍り付いてしてしまいました。その後、3つの業務量アンバランス解消方法を聞かなかったら、そのまま凍死したかもしれません(笑)。ちなみに前述の3つの業務量アンバランスの解消方法とは ①業務マニュアル管理システム(AIOS S・Mver.)の自社構築 ②業務マニュアルの冒頭にインデックスを追加、です。それだけで巨額の管理利益が得られます。

 セミナー終了後に、某グローバル企業の経理課長さんが 「自社もERPは導入済みですが、組織マネジメントシステム(OMS)は未導入でした」とカミングアウトされました。そこで私は次のように答えました。「御社のライバルC社は、当の昔にOMSを導入済みです。御社が製品利益だけなのに対し、C社は製品利益+管理利益です。戦場に例えると、御社の兵隊の装備は小銃のみ、対する敵のC社は小銃+バズーカ砲です。これで戦いに勝てますかね?

 苦笑する課長さんの横で、無言を貫く主任さんが 「私がやって見せます!!」と目でアピールしてきました。今後の彼らの奮起に期待しつつ、心地よい達成感に包まれてセミナー会場を後にしました。

 欧米では1970~80年代に発掘・計上し始め、会社業績に大きく寄与し続ける『管理利益』は組織マネジメントシステム(OMS)を自社構築すれば御社でもすぐに得ることができます。そのプロセスは①AIOSベース作成 ②S・Mver.作成 ③標準ver・作成のわずか3ステップです。業務マニュアルの整備状況により若干前後しますが、通常1~3ヶ月あれば御社でも管理利益を得ることができます。

 管理利益計上に必要な「投資」は各AIOS作成に必要な人件費プラスセミナー受講費のみ、その「回収( リターン )』は巨額の管理利益です。「100年に一度の経済危機」の渦中にある現在、海外の競合他社はとうに導入済みのOMS自社構築に取り組まないという選択肢はありません( 製品利益だけで20~30%ある会社を除く )。

 御社はいつまで社員の「キセル乗車(=非稼働時間)」を放置するおつもりですか?

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