⑩TMS研メルマガ一覧表

メルマガ第90号

御社は「社員教育」をどのようにお考えですか?

 私は組織マネジメントと人財育成を主テーマとするプロの経営コンサルタントですが、経営学等の正規の教育は受けていません。全TMS研メソッドは数多ある職業体験から生まれたもので、そのバックボーンは①ジャンルを問わない読書 ②ビジネスセミナー ③工場見学です。

 そうして生まれた数々のオリジナルメソッドを前職(電線メーカー,700人規模)で実施、その中で費用対効果の高いものを現在教えています。社内コンサル時代とプロコンサル時代の違いは ①メソッドの体系化・理論化 ②説明力向上 ③営業力の3点くらいで、コンサル技術自体は社内コンサル時代にほぼ完成していました。

 文学部西洋哲学科というところで虚学(「実学」の対義語)を学んだため、仕事に必要な知識はすべて社会に出てから学びました。総務で安全衛生や株主総会を担当した時は、社外セミナーをよく受講しました。品質管理室でQCサークルと改善提案活動、5S活動、間接業務の「見える化」活動、ISO9001を担当した際も、最低月1回は社外セミナーや工場見学、講演会に出かけたものです。私はビジネスセミナーで育ったと言っても過言ではありません。

 ある時総務の教育担当者が私の上司(部長・元労組委員長)に「角川さん一人で全社教育予算の半分を使っているんですけど、何とかなりませんかね…」とクレームをつけたことがありました。すると上司曰く 「なんだ、まだ半分残ってたのか。それ全部角川によこせ!!

 「せっかくセミナーを受講させてやっても居眠りするようなヤツばかりのこの会社で、角川は1時間前に会場入りし、5S状況やホワイトボードマーカーのインク残量をチェック、講義前に講師と話をしてるぞ

 「受講後は立派な受講報告書を作成し社内ネットで公開するし、先週の金曜の定時後には自主セミナーまでやってるぞ。この間5Sの大家N先生に社内講演してもらえたのも、角川がお願いしたからだ。こんなに費用対効果の高い社員が他にいるか?

 どうです、この腹の据わりっぷりは(笑)。部下も部下なら上司もまた上司です。もっともこのくらいでないと、私のような者の上司は務まらないのかもしれませんが…。

 ほうほうの体で逃げ帰る総務部員の後ろ姿を目に上司はため息をつき、次のように言いました。

 「角川よぉ、親会社から来た人たちから「この会社にはろくな人財がいない」と入社以来バカにされ続けてよ、ずっと悔しい思いをしていつか見返してやろうと頑張ってきたんだよ

 「だけどよ、そんな意地があったのも俺たち団塊の世代までで、お前らバブル世代から下は俺から見てもバカばっかりにしか見えねえんだよ、悪いけどよ

 「そんなバカしか来ねえんだから、親会社の数倍教育しなきゃダメだと思うんだけどよ

 「でもお前をちょっと東京のセミナーに出しただけで全社の教育予算の半分がなくなったっていう今の総務の話聞いたらよ、俺はほとほと情けなくなってきたよ…

 ここで話は変わりますが、皆さんは日本の教育への公的支出がOECD諸国中最下位である、という事実をご存知でしょうか?
(→  https://resemom.jp/article/2018/09/13/46752.html)

 諸外国は国の未来を担う子供たちの教育は国家戦略の一環と考え、ふんだんに予算をかけています。それに引き替え我が国は国公立大学の独立行政法人化等、教育予算の削減に邁進しています。その甲斐あって、私の学生時代に比べると大学の学費は随分と高くなりました。親の所得水準も下がったため、奨学金という名の多額の借金を背負い社会に出る若者も激増しました。借金返済のため結婚年齢も上がる一方で、子供なんか増えるわけありません。本当に大丈夫なんでしょうか、この国は?

 そうして「安く教育された学生」を「諸外国に勝てる仕事のできる社員」にアップグレードするには社員教育しかないのですが、その実態は皆様ご存知の通りです。プロ講師となった現在、私は工業系セミナー会社11社とお付き合いがありますが、最近各社とも集客に苦戦しているようです。その理由は次の通りです。

  1. 昨年10月の消費税増税による景気の先行きの不透明感が、セミナーの集客数にダイレクトに響いている。
  2. 加えて中国バブルの崩壊を共産党政権がついに認めたこと、武漢発のパンデミックと年明け早々から景気をさらに冷え込ませるニュースが報道されている。
  3. 上記の理由により、社外セミナー受講禁止措置をとる会社が増えるものと考える。

 私の前職は電線製造業というあまりもうからない業種でしばしば経営状況が悪化していたので、業績不振会社の経費削減パターンを熟知しています。社外セミナー受講禁止がだいたい最初で、その後残業規制 → 福利厚生費削減 → 経営者・部課長の給与カット → 残業禁止 → 従業員の給与カット → 一時帰休 といったところでした。

 さてここで皆さんに質問です。不景気の際に「出金を抑える」というのは常套手段ですが、教育費とは本当に「出金」なのでしょうか? 私見では、教育費とは「出金」ではなく「投資」です。「投資」とは、未来のリターンに期待し資金を投下する「経済活動」のことです。「このセミナーをA君に受講させれば、将来主力製品となる製品を開発してくれるかもしれない」と考えセミナーに行かせることは、将来の値上がりを期待して株を買う行為となんら変わりありません。

 皆さんは投資のプロがいつ株を買うかご存知でしょうか? 世間に不況感が蔓延し、株価が底値になったときです(つまり今現在です)。底値で買って天井で売れば、莫大な利益を計上できます。同様に競合他社が教育費をケチり、社外セミナー受講禁止令を出している今こそ御社の社員教育の一大チャンスです。競合他社が社員教育を怠っている今御社が行えば、教育(=投資)の将来のリターンを最大化できます!! 不況時は仕事が薄いので、じっくり勉強できる利点もあります。

 私は多くの職業経験があり、また経営コンサルとして多くの会社の事例を見てきました。その知見から断言できます。成長する会社社員教育を「投資」と考え、衰退する会社「経費」と考えています。つまり会社を大きくするのも滅ぼすのも、経営者および経理の考え方一つということです。

 以上の理由により、私は「社員教育=先行投資」と考えます。必要な先行投資を怠ると将来の経営に悪影響を及ぼすことは、もはや説明不要でしょう。

 御社は『社員教育』をどのようにお考えですか?

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