⑩TMS研メルマガ一覧表

メルマガ第19号

御社の設計部門は『21世紀の経営環境』に対応済みですか?

 前回のメルマガでは「管理技術」の大切さについてお話しさせていただきました。今回は設計部における「管理技術」の要諦についてお話しいたします。

 もともと製造業において設計部門は忙しい部署でした。設計(製品開発)というメーカーで最もやりがいがあり、またいわば際限のない仕事なのでサービス残業の宝庫のような部署でした。ひょっとすると「残業」という概念すらなかったかもしれません。今の基準で考えると一種のブラック職場だったのかもしれませんが、当時は時代背景もあり、そのように考える人はほとんどいませんでした。それどころか、むしろ憧れの職場だったように思います。

 また世界一厳しい日本人を主要顧客としていたため、過剰ともいえる品質を常に要求され、設計部門はその矢面に立たされ続けました。そのおかげで日本製品は世界ダントツの品質を誇るようになりました(それが今日では『ガラパゴス化』と揶揄されるようになったのは皮肉な話です)。このような設計部門の状況も、今振り返ってみるとまだ牧歌的だったように思えます。

 しかし1990年代に入りISOブームが訪れました。またPL法が施行される等、メーカーにとって厳しい時代が到来しました。ISO9001と14001の認証取得および維持・運用は、設計部門に新たな業務負荷をもたらしました。またISOブーム以降、顧客による監査も増え、その対応にも追われるようになります。部材メーカーでは2001年に欧州で起きた『涙のクリスマス事件(注)』以降、組立メーカーから製品含有化学物質調査回答書の提出も要求されるようになりました。その上、新規顧客開拓に際し営業部門から設計者の同行要請も頻発する等、今日では設計者が何人いても足りない状況となりました。あわてて新卒を採用しても一人前の設計者になるには最低10年はかかります。人員がひっ迫した今となっては、その間の教育に割く時間も大変な重荷です。

(注) 2001年当時爆発的に売れていたプレーステーション(ソニー製)のコードの被覆からカドミウムが検出され出荷停止となったことにより、クリスマスプレゼントとして同製品を期待していたヨーロッパ中の子供たちが涙にくれたとされる事件。

 さてここまでごく大雑把にここ30年間の設計部門における経営環境の変化について振り返ってみましたが、読者の皆さんは何かお気付きでしょうか?どうもISOブームあたりから、本来業務である設計以外の業務(周辺業務もしくは雑用)が増えてきたように思いませんか?もともと多忙だったところに、いわゆる「金にならない」仕事ばかり増えて困っている、というのが現在設計部門の置かれている状況と私は考えています。

 この状況を打開するには、優れた性能の製品を設計する「固有技術」では不可能で、設計部門の全業務を一元管理して全体最適化を図る「管理技術」でしか解決できません。際限なく増えてゆく周辺業務や雑用(金にならない仕事)をいかに効率よく片付け、部署の本来業務である製品開発・設計(金になる仕事)により多くの時間をまわすかが、21世紀の設計部門の業務マネジメントの要諦です。それには部署の全業務一つひとつの所要時間(工数)の見える化」が必須条件となります。

 このマネジメントを行わないとメーカーとして肝心要の「設計品質」が低下し、御社製品がマーケットでのシェアを落としかねません。私の前職の会社の設計部門ではこの管理技術を知らなかったばかりに、官公庁提出書類用の試験データ採取の時間が捻出できずに偽造文書を提出してしまいました。その結果、出荷停止処分を食らい会社経営に大打撃を受けた話は前回のメルマガでお話しした通りです。

 御社の設計部門は『21世紀の経営環境』に対応済ですか?

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