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メルマガ第22号

御社のマネジメントは「優位戦」「劣位戦」を意識していますか?

 今回は、日本では自衛隊関係者以外ほとんどなじみのないと思われる『軍事戦略』を例に、会社の経営戦略についてお話ししたいと思います。「そんなの自分に関係ねーや」と思われたそこのあなた、ちょっと待ってください。御社全体を「軍」と考えると、あなたの所属する部や課(グループ)はその一「部隊」です。一「部隊」のマネジメントは、「軍」の戦略を達成する目的で行われます。あなたの勤めている「会社」と「部署」の関係となんら変わりませんよね?今回は軍事オタクでない一般の方にも分かりやすく説明しますので、お時間のある時にぜひお読みください。

 資本主義社会において「会社経営」とは、自由競争化にある同業他社との「戦争」に他なりません。国内だけでも熾烈な競争を行っているうえに、経済のグローバル化により、先進国のライバル会社との競合に加えBRICsを代表とする新興工業国の追い上げも近年激しさを増し、「戦争」の指揮官である経営者は気の休まる暇もありません。

 そして戦略のない戦争がない(偶発戦争を除く)のと同様に、経営戦略のない会社経営もあり得ません。経営戦略がないと方向性が定まらず、会社が何に向かって努力したらいいのか分からないからです。軍事学では戦略が色々とありますが、今回は『優位戦』と『劣位戦』についてお話ししたいと思います。

 『優位戦』とはその名の通り、自軍が敵より優位に立っているときに採る戦略です。現実社会では、アメリカの戦略がそれにあたります。それに対し『劣位戦』とは自軍が敵より劣る時に採る戦略です。ベトナム戦争時の北ベトナム、アフガン戦争時のアフガニスタン、最近では北朝鮮やイスラム国の戦略がそうです。

 ここで大切なのは、自軍が敵と比べて優位なのか劣位なのかの「見極め」です。優位なのに『劣位戦』の戦略を採っていては勝てる戦争も勝てませんし、劣位なのに『優位戦』の戦略を採っていてはあっと言う間に負けてしまいます。

 また是非知っていていただきたいことは「優位だから必ず勝つとは限らない」ということです。逆に言えば「劣位だから必ずしも負けるわけではない」ということになります。

 話は変わりますが、私は小学3年生の時に祖父に将棋の手ほどきを受けて以来、中学・高校・大学・社会人と30年近く将棋を趣味の一つとしていました。一時はかなり熱中し、棋力は弱い五段くらいありました(25年ほど前の話ですよ。現在では歳のせいか弱くなりました(苦笑))。将棋とは一言でいうとズバリ「戦争ゲーム」です。指していくうちにたいがい優勢・劣勢のいずれかになりますが、劣勢側が劣勢であることを認めて簡単には負けない指し方(劣位戦)を採ってくると、優勢側もなかなか簡単には勝てないものなのです。

 簡単には負けない指し方(劣位戦の戦い方)は、3年前に亡くなられた米長邦雄永世棋聖の著書『米長の将棋』で学びました。米長先生は若い時分より終盤力が絶大だった反面、序盤の指し方に難点があり中盤から終盤にさしかかる頃はたいがい劣勢だったそうで、いわば『劣位戦のスペシャリスト』と言えるお方です。

 米長先生の教える『劣位戦』を戦うコツとは、優勢側に対して全面的に劣勢にならないこと、でした。逆に言うと劣勢側も最低何か一箇所は優位に立てる箇所を作り、それを強調することで優勢側に「焦り」を感じさせ、ミスを誘発するように仕向けるのです。これは現実社会で行われる戦争の軍事戦略と全く同じです。

 この指し方をマスターしてからは、劣勢なら劣勢なりの指し方ができるようになり、そう簡単に勝負を諦めなくなりました。またこの指し方は対戦相手に「手強い相手」という印象を与えることもあり、当然勝率も上がりました。

 前述の北朝鮮は「瀬戸際外交」などと揶揄されていますが、日本とアメリカ両国を敵に回し、その国力からすると実にしぶとく『劣位戦』を戦っているという見方もできます。

 さあ、ここで我々が身を置くビジネス社会へと戻りましょう。早速質問ですが、皆さんの会社の業界における位置付けはいかがでしょうか?業界のトップシェアを誇るリーディングカンパニーであれば、『優位戦』を意識した経営戦略を採らねばなりません。また二番手以下であれば、トップの独走に「待った」をかけ自社のシェアを少しでも伸ばす『劣位戦』を意識した経営戦略を採る必要があります。最悪の選択は、優位戦を戦っている業界トップと同じ戦略を採ることであることはお分かりいただると思います。自動車業界で言えば、マツダがトヨタと同じ経営戦略を採ることはありえないのと同じです。

 さて皆さんの会社が『劣位戦』を戦っている場合、みなさんの所属する部署のマネジメントも当然『劣位戦』を意識したものでなければなりません。このことを「軍」の一「部隊」の指揮官である部長や課長(グループマネージャー)が充分認識していないと、大変危険です。

 自社の経営戦略に沿った組織マネジメントを行うには、自部署の『オールインワンシート(AIOS)』の『標準バージョン』『スキル・マニュアルバージョン』が必要となります。具体的な実施事項としては、これから伸ばしていく分野(業務)には優秀なスタッフと潤沢な時間(工数)を充て、そうでない分野(業務)は①マニュアルを整備した上で下位者に移管する②業務改善・改革を実施して必要工数を削減する、等を実施します。

 このように『AIOS』がないと経営戦略を各部署の実務に反映することが出来ず、経営目標も「絵に描いた餅」と成り果てます。その結果勝てる競争にも勝てず、負けなくても良い競争に負けるようになってしまいます。

 御社のマネジメントは「優位戦」向け「劣位戦」向けのいずれですか?

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