⑩TMS研メルマガ一覧表

メルマガ第83号

御社に「社内差別」はありませんか?

 日本は歴史上奴隷制度が存在しなかった唯一の先進国であり、このことは世界に誇りうる史実である、と前回のメルマガでお話ししました。その代りという訳ではないのでしょうが、かつて士農工商という序列の下に「エタ」「非人」「サンカ」と呼ばれる人たちがいたことはご存知でしょうか?

 江戸幕府がこれらの人々を身分制度の埒外とした理由は、国民の大半を占める農民の不満のはけ口としたためという説があります。これらの非人道的な制度は明治維新後の1871年に廃止され、四民平等の世が訪れました。しかし現実は厳しく、法律で禁止されたはずの身分差別は実際にはなかなか周知徹底されませんでした。詳しくはこちらの動画(5分)をご覧ください。

『怖い…地図から消えた村とその理由を漫画にしてみた(マンガで分かる)』
→ https://www.youtube.com/watch?v=z0jc3mK75QM

 身分差別廃止後150年経った現在、皆さんの会社に「社内差別」は存在しないでしょうか? 私の前職では残念ながらありました、職位とは別の非公認社内階級が。以下、その序列を上から順に列挙します。

  1. 親会社からの出向者
  2. 親会社からの転属者
  3. 正社員
  4. 子会社社員
  5. パート社員
  6. 派遣社員
  7. 構内請負業者
  8. シルバー人材センター派遣の高齢者

 さらに③は新卒採用(正規入社)組と中途採用組で序列があります。

  「天は人の上に人を作らず」という言葉をかの福沢諭吉翁が残して150年経つというのに、一体これはどうしたことでしょうか? こんなことで組織マネジメントは正常に機能するのでしょうか?

  私の前職でこんな職場がありました。200人規模の子会社だったのですが、前述の①~⑧の序列の他に⑨準社員⑩嘱託社員⑪アルバイトが加わり、実に11もの社内階級制度が存在していました。派遣会社は4社混在し、内1社は日系ブラジル人専門です。彼女たちが昼休みに音楽をかけてサンバを踊ることが大問題となっていました(笑)。工場にありがちな女性差別年功序列に加え外国人差別も交わり、その上労働者の属性が11です。考えるだに恐ろしい職場です。

  当然組織マネジメントが正常に機能するはずがありません。これによる一番の被害者は、現場責任者である組長さんでした。モチベーションも低く、働く人の心が一つになる事など夢のまた夢であったこの職場では、生産性も品質(歩留り)も低く、ケンカも絶えませんでした。当然従業員定着率も低く、現場を預かる組長さんたちはメンタル不全発症一歩手前の状態で歯を食いしばっている状態でした。

  当時、改善提案活動事務局だった私は、提出されてきた全改善シートに目を通していましたが、この職場から提出されるシートに、異業種経験がないと決して出てこないアイデアが盛り込まれているものが多いことに気付きました。この業界しか知らない正社員の提案と比較して、非正規雇用の方の提案は正に「業界の常識の盲点」を突くものが散見されたのです。私自身、大変勉強になったものです。

 その想いを事務局コメントとして赤ペンで記入した後、件の工場に行って提出者と話をしてきました。彼女の職歴を聞くと、アパレル、花屋、結婚式場を経験された方でした。提出された改善シートのアイデアを褒め、「今後とも我々の至らぬ点をご指摘ください」と一礼すると、彼女はとても嬉しそうでした。

  提出者が事務局に絶賛されたこの話は、噂話が大好きな女性作業者の間で瞬く間に拡散しました。すごかったのが翌月です。なんと150枚の改善シートがこの職場から提出されたのです!!

 これにいちいち目を通す組長さんも大変だろうと思い、同工場へ赴きました。O組長は「角さんが変なことするから、現場がえらいことになってますよ!! どうしてくれるんですか!!」と言った後、ニヤリと笑ってこう続けました。

  「角さんだから話すけど、ここは人員構成がメチャクチャで我々組長は本当に苦労してるんです」 「主任や課長に相談しても、現場のことはお前が考えろってな感じで、全然親身になってくれなくて…」

 「今月たしかに改善シートが大量に提出されて大変だったけど、オレ、本当に嬉しかったんですよ」 「今までよそよそしかった派遣さんが初めて本音で話してくれたし、言われたとおり改善してあげたら、とても嬉しそうな顔して笑ってくれたんです!!」 「考えてみたら、オレ、派遣さんが笑うところ初めて見たんですよ」 「笑うんですね、あの人たちも(笑)」

 この後、同工場の事務所行き、親会社からの出向者であるA課長と話しました。「Aさん、組織風土改善のまたとないチャンスです。改善提案活動を全面的に支援してください!!」 A課長も現場の異常さには薄々気づかれていた様子で「分かりました」と快諾です。

 それまで正規雇用の人だけで開催されていた忘年会に、初めて非正規雇用の人も参加したその年、私はゲストとして参加し、正規・非正規の垣根を越えて歓談している様子を見ていました。この職場についに「一体感」が生まれた瞬間を現認し、事務局としてこの上ない満足感を感じたものです。

  たかが改善提案、されど改善提案、このささやかな活動を通し、この200人の工場は、異業種経験者のノウハウ・意見を取り入れたことにより、見事に快適職場化しました。もちろん、生産性・歩留り・定着率・労災発生率等すべての数値データが向上しました。これも「社内差別」を撤廃し、人財を活用したからに他なりません。

 御社に「社内差別」はありませんか?

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