⑩TMS研メルマガ一覧表

メルマガ第66号

あなたは欧米流マネジメントシステムを過大評価していませんか?

 近頃本屋に行くといわゆる『平成総括本』が平積みされているのを目にします。私(昭和40年生まれ)が子供の頃の生年月日記入欄には(明・大・昭)とありましたが、もうじき(昭・平・○)となるのですね。しみじみ「昭和は遠くなりにけり」と思います。

 『平成総括本』の本を手に取ると政治・芸能・スポーツ等々のジャンル別に、「平成とはこのような時代であった」といったことが論じられていますが、我々の生活に直結する「日本経済」にとって平成の30年間とはどんな時代であったでしょうか? この先を読む前に、一度目を閉じて2~3分間考えてみてください。

 バブル経済崩壊(1991年(平成 3年))以降の日本経済を評して「失われた10年」
→ 「失われた20年」 → 「失われた30年」 と言われますが、一体何が「失われた」のでしょうか? またその原因は何なのでしょうか?

 この問いに対する角川説は、添付『①日本人が失ったもの』をご覧ください。そうなった原因は色々とありますが、組織マネジメントの視点からざっくりと分析すると次の通りです。

昭和】 従業員性善説に基づく組織マネジメント
平成】 従業員性悪説に基づく組織マネジメント

 また、そうなった原因はISO9001を始めとする欧米流マネジメント手法の過大評価にあると考えます。日本人は1853年のペリー来訪 → 開国 → 明治維新 → 工業国化 の過程で、欧米列強を師匠と仰いだため、欧米を過大評価する傾向があります。もっと言うと、日本人は欧米を神格化しており、欧米由来の事物をその真価を問うことなく無条件(無検討・無批判)で導入する傾向が見られるのではないでしょうか?

 教える側(欧米)から見ると、教えたとおりやる素直な生徒(日本)は教えやすく、また学習成果も上がりやすいのですが、素直な生徒には一つ大きな問題点があります。教えたことを無批判に鵜呑みするため、いつまで経っても「自分自身の頭で考える能力」が身に着かないのです。これでは問題点を自ら発見し、自力で対策を考え実施する『自立型人財』など、永久に育つはずがありません。

 私は長年人財育成に携わってきましたが、高学歴の人ほど自分の頭で考えることをせず、ネット検索等の安直な手段に頼る傾向があるように見受けられます。これは暗記偏重の日本の学校教育の重大な欠陥で、このような教育を受けてきた人が社会に出て、①過去に前例のない問題の解決や ②他に類を見ない画期的な新製品の開発が出来るはずがありません。

 また仮に①②をやってやろう!! という気概のある人財(社の宝)がいたとしても、「出る杭は打たれる」の格言通り、寄ってたかって潰してしまう組織風土にも問題があります。したがって①②に自ら取り組む気概のある人財は、外資企業に居場所を求め、国内企業から流出してしまいます。まさしく「頭脳流出」に他なりません。

 こうして「天才型社員」を駆逐して「秀才型社員」が経営の中枢に座った会社はどこかで見たような製品しか世に送り出せず、長期衰退のコースを辿ります。このような会社が新聞・テレビに報じれらるのは、粉飾決算発覚や事業撤退・大規模リストラ等のネガティブ情報のみとなります。

 ここ数年世間で注目されている事例を一つ挙げましょう。『大塚家具』という中卒の一介の家具職人に過ぎなかった創業者が一代で築き上げたエクセレントカンパニーを、一橋大学でMBAを取得した長女があっという間にダメにしたあの事例です。

 この事例こそ、欧米流組織マネジメント手法が日本人には有効どころか、害にしかならないことを証明してくれます。会社を人体になぞらえると、経営理念および戦略が「頭」、組織マネジメントが全身に新鮮な血液を送り手足を動かす「心臓」です。その「心臓」を、歴史・文明共に全く異なる風土で生まれた欧米製のものに真価の検証なしに置き換えた経営者の判断ミスこそ、日本企業を未だバブル崩壊から立ち上がらせることのできない現状に導いた最大の原因です。

 見習うべきは『従業員性悪説』に基づく欧米企業ではありません。『従業員性善説』に基づく日本企業です(坂本光司先生の『日本で一番大切にしたい会社(全6巻)』をぜひお読みください)。

 あなたは欧米流マネジメントシステムを過大評価していませんか?

Sitemap

Contact us

お気軽にお問い合わせください。
PAGE TOP
PAGE TOP