⑩TMS研メルマガ一覧表

メルマガ第134号

あなたは仕事を楽しんでいますか? (その③)

 角川家の親戚の半数は「先生」「士業」を生業としています。中でも私の実家は先生率100%です。父は退職後大学講師とコンサルタント、母は高校講師、妹は小学校教員でした。妻も英会話教師です。小泉家の家業が政治家なら、角川家の家業は先生です。私が経営コンサルになったのも、そんな家庭環境が一因なのでしょう。血は争えないものですね。

 教育で大切なのは①教える内容 ②教え方、の2点に尽きます。その2点を学ぶため、私は今でもよくセミナーを受講します。今回『世界の最強コーチと子供たち 奇跡のレッスン』シリーズのYouTube動画を視聴したのも、セミナー・コンサルの参考にするためです。生徒を従業員、指導者を経営者・管理職、コーチをコンサルタントに置き換えると、『奇跡のレッスン』は『奇跡のコンサル事例』として見ることができます。

 同シリーズに登場するコーチは一部の例外を除き、外国人ばかりです。そのため日本人および日本型組織の短所にすぐ気づきます。中には日本で働いた経験のあるコーチも複数おり、「日本人論( 異文化から見た日本人の特徴 )」の見地からも非常に興味深い内容となっています。以下、動画のジャンルとコーチの国籍および属性について列記します。

① 和食 (日本人)
② 洋菓子 (フランス人)
③ 書道 (中国人、日本留学経験あり)
④ 吹奏楽 (アメリカ人)
⑤ 女子テニス (ドイツ人、大坂なおみ選手のコーチ)
⑥ フィギアスケート (スペイン人)
⑦ スピードスケート (日本人、長野オリンピック金メダル、身長162㎝)
⑧ 長距離走 (イタリア人)
⑨ パラ陸上 (ドイツ人、身体障碍者)
⑩ 女子バレーボール (トルコ人)
⑪ 女子ソフトボール (アメリカ人、日本で14年間プレー、右手に障碍あり)
⑫ 女子サッカー (ドイツ人)
⑬ バスケットボール (アメリカ人、元NBA選手、身長160㎝)
⑭ 野球 (アメリカ人、元ロッテ監督)
⑮ ラグビー (オーストラリア人、前日本代表チームコーチ)
⑯ フットサル (スペイン人、日本代表チーム監督)
⑰ ハンドボール (デンマーク人)

 上記の17本中、私は12本を見ました。①~④が文化系、⑤~⑰が運動系です(⑤~⑨が個人競技、⑩~⑰が団体競技)。組織マネジメントを学びたい方は⑩~⑰がお勧めです。皆さんが学生時代にやっていた( 現在もやっている )ものがあれば、それからご覧になるといいでしょう。

 これらの動画から得た知見および角川のコメントは下記の通りです。

【生徒( 日本の中・高生 )の共通点】

① 声が小さい。
② 自分の意見を言わない。
③ 消極的
④ 自信がない。

 これらの原因はすべて我々大人にあります。「失われた30年」ですっかり自信を失ってしまった我々の背中を見て彼らは育ちました。まさしく「子供は親を映し出す鏡」です。また①②はいじめ対策なのでしょう。クラス内で目立つといじめられることを恐れ、こんな子供たちが育ちました。空手・バレエ・音楽教室でこのような子供たちを多数現認し、私はこの国の将来に不安を感じた経験があります。皆さんの部下はどうでしょうか?

 【一流コーチの共通点】

① 独自の考え方( 持論 )があり、見るところが一味違う。
② 努力型( ≠天才型 )である( 自身の体格や身体のハンデを克服している )。
③ ポジティブ思考で明るい ( 魅力的なオーラを発している )。
④ 自信を持たせるために良い点をほめる( 自信を喪失させるので決して叱らない )。
⑤ 指導理由を丁寧に説明する( 説教はしない )。
⑥ 生徒の心をつかむのが上手い。
⑦ 指導者が見逃していた「逸材」を発見する。

 明治維新以降、欧米列強に追いつくことを目的とした日本型教育は、生徒のスペックの標準化を行いました。その甲斐あって日露戦争に勝利した結果、日本は非白人国家として唯一の先進国となりました。しかし長所を伸ばすより短所を克服する (=ほめるより叱る)という教育方針は、生徒にとって決して楽しいものではありませんでした。そして「勉強を楽しめなかった生徒」は、社会に出ると「仕事を楽しめない大人」になります。

 世界3位の経済大国である日本が、そうなる過程で失ったものの一つが「仕事を楽しむ」姿勢です。それに気づいた外国人コーチは生徒たちに斬新な練習方法を指示し、練習を楽しむ姿勢にマインドリセット( 意識改革 )します。どの動画を見ても、目に生気の戻った生徒たちの姿を見ることができます。そんな生徒のたちの姿を、指導者があっけにとられた表情で見つめていたのが印象的でした。

 一流コーチに共通する教えを一言でいうと「楽しめ!!」です。強豪校との試合を前に委縮する生徒たちに、あるコーチはこう言いました。「試合とは自分を表現できる喜びの場だ!!」「勝てば自信が、負ければ学びが得られる」 「そう、失うものなんて何一つないんだよ!!」この一言で生徒たちの表情が一変します。

 楽しまないといけない理由は、リラックスしないと実力を100%発揮できないからです。また「楽しむ」姿勢がないと遅かれ早かれ心が折れて、決して長続きしません

 「楽しむ」姿勢は奇跡を起こすことがあります。昭和59年夏の全国高校野球大会決勝戦で、桑田・清原を擁するPL学園と茨城県立取手二高が対戦しました。二年連続決勝進出の王者PL学園対無名の県立高校の勝負の見どころは、PL学園から取手二高が
はたして得点できるのか? でした。

 名伯楽木内監督は、試合前に委縮している選手たちにこう声を掛けます。「お前たちは最高だ」 「俺を甲子園決勝という最高の舞台に連れてきてくれた」  「そんなお前たちに対して、もはや言うことはない」 「この舞台に立てなかった全国の高校球児を代表して、この試合を思いっきり楽しんで来い!!」 「さあ、大観衆がお前たちを待っているぞ!! 笑ってグランドへ飛び出せ!!」

 全員笑顔の取手二高にPL学園も調子が狂ったのか、試合結果は8対4で、取手二高が勝ちました。その一部始終をテレビで見ていた私は「これは奇跡に違いない!!」と思いました。しかし今では「奇跡」とは思っていません。「楽しむ」姿勢にはそれぐらい力があることを、コンサル活動を通じて知ったからです。 

 また「楽しむ」姿勢からは、「いじめ」「しごき」「かわいがり(相撲用語)」は生まれません。もし学校の授業が生徒の知的好奇心を満たし、聞いていてワクワクするようなものだったら、他の生徒をいじめようと思うでしょうか? 会社でパワハラ・セクハラ・メンタル不全が発生する原因も、仕事がちっとも楽しくないためです。そのストレスがこれらの真因です。前職で私が長年にわたる過重労働(時間外労働:300時間/月)でつぶれなかったのも、仕事を楽しむ姿勢をなんとか堅持し続けたからです。

 そんな私の人財育成メソッドの概要は次の通りです。

① ノウハウを教えるだけではなく、そのノウハウを生み出すに至った「考え方」も教える。
② 教えるだけでなく、考えさせる。
③ 良いところを見つけ出し、とにかくほめる( その際、「ほめる理由」を相手に必ず伝える )。
④ 自身の至らぬ点に気づかせ、自己啓発したくなる仕組みを構築する。
⑤ 自己啓発した成果を、数値データで「見える化」する。

 このメソッドの目的は、「教わる(受け)」から「学ぶ(攻め)」への転換です。勉強は「やらされ」感でやるのと「やりたい!!」想いでやるのとでは、教育効果に大きな開きが生じます( 親に家庭教師を付けられいやいや勉強している子と、自力で人生を切り拓こうと思って自習している子を想像してみてください )。

 社会人教育に対する私の持論は「自己啓発がベスト」というものです。その前提として「勉強=つまらない」から「勉強=楽しい!!」へのマインドリセット(意識改革)が必要条件となります。社会人は学生と違い、学業が本業ではありません。そんな社会人教育として費用対効果の観点からべストなのは、日々の仕事から学んでもらうことです。そのためには仕事を楽しみながら取り組める仕組み作りが必要です。

 「そんなことできるわけねぇだろう!! 俺だって仕事なんかちっとも楽しくねぇのによ、けっ!!」と今心の中で思ったそこのあなた!! そんなあなたの「心の声」は、あなたが気づいていないだけで、従業員や部下の皆さんに確実に届いています。バスケットボールコーチのマグジー・ボーグス氏は「生徒の指導にフラストレーションを感じる」という指導者の相談に対して、「生徒は指導者の鏡です」と答えています。従業員や部下が仕事を楽しんでいない真の原因は、経営者や管理職であるあなた自身が仕事を楽しんでいないからです

 仕事を楽しむ心境になるには「受け身」から「攻め」にマインドをリセットすることです。上司に言われたことを何も考えないでやるのではなく、自分の頭で業務の目的を考え、その遂行方法がベストなのか考えるのです。そしてもっと生産性のいい方法を考え、それをやってみるのです。

 部下に「仕事を楽しんでもらう」ために上司のやるべきことは、次の3点です。
① 全業務の目的を「見える化」する( 『業務目的体系表』作成 ) 。
② 全業務の生産性を「見える化」する(『AIOS標準ver』.および『業務毎単価ver.』作成) 。
③ 全業務の遂行方法を「見える化」する(『AIOS スキル・マニュアルver.』作成)。

 上記①~③で部下のマインドリセットは完了です。あとは ④部下の相談に乗る ⑤業務改善・改革を支援する ⑥ほめる( 部下に自信を持たせる)、の3点を実施すれば、部下は大きな達成感を感じます。一度この達成感を味わった部下は業務生産性向上意欲が高まり、放っておいても次の課題を発見し、生産性向上に取り組みます。もう誰も彼( 彼女 )を止めることはできません。 

 あなたは仕事を楽しんでいますか?

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