⑩TMS研メルマガ一覧表

メルマガ第126号

あなたは「5S」の価値を正しく認識していますか?

 「TMS研」で検索できる私のホームページの「profile」にも開示してある通り、32歳で前職の中堅電線メーカーに中途入社するまで、私は多種多様な職業を経験しました(その理由はHPの「FAQ」のA.4に記載)。物流倉庫、コンビニ、自動車工場、観光ホテル等々で働きましたが、そのいずれも5S(整理・整頓・清掃・清潔・しつけ)は徹底されていました。これらの事業所では5S状況が悪いと生産性・品質・売上にダイレクトに響き、利益を損ねるからです。生来だらしない私ですが、それらの職場で働くうちに5Sセンスは否応なしに磨かれていきました。

 そんな私の目から見て、前職の工場・事務所は「えっ? これでも日本メーカー?」と思えるほど、5S状況が悪かったことを覚えています。総務部で安全衛生事務局だった時、「安全通路に物を置かないで!!」 「ドラムストッパーを床に放置しないで!!」 等々、5Sについて口やかましく指導しましたが、言うことを聞いてくれるのは直近に5S不良による労災を起こした職場だけでした(苦笑)。

 その後、リストラによる人員削減と上司のメンタル不全発症による業務量激増により過労死しかけた私は、退院後に品質管理室へ異動しました。そこではQCサークル(職場小集団活動)の事務局を務めました。親会社が県QCの幹事会社だったこともあり、2年間はおとなしくQC活動にいそしんでおりましたが、「発表会ありき」のQC活動の形骸化に気づき、「この活動は「経営に対する犯罪行為」では?」と考えて同活動を停止し、5S活動に切り替えました。

 社内に5Sを指導できる人財がいないので、①セミナー受講(7本) ②書籍購読(40冊) ③工場見学(7社)によりスキルを身に着け、私が5S指導者となりました。その後、2つの事業所の現場で52の『5Sサークル』を結成し、活動対象を決めてもらい、月1回『5S作業指示書』を発行し、各現場を巡回指導しました。進捗の芳しくないサークルのリーダーを怒ったりせず、あくまで現場の自主性を尊重した結果、数ヶ所で奇跡的な成果を現認したことは以前メルマガ第15号でお話しした通りです。

 翌年、事務所の5S活動を立ち上げる前に、小林啓子先生(中部産業連盟)の『ファイルの5Sセミナー』を受講しました。そこで教わったことは、次の通りです。

① 事務所の5S≒ファイルの5S、ファイルを減らしたかったら仕事自体を減らせ!!
② 不必要なファイルを探すな、必要なファイルを探せ!!
③ 必要なファイルを「見える化」する『業務分類表』

 先生曰く、クライアントにトヨタ式5Sで不要なファイルを捨てさせたところ、1,000冊のファイルが800冊にしか減りませんでした。「このやり方ではダメだ!!」と悟った先生が、ひねり出したものが『業務分類表』でした。これにより1,000冊のファイルが200冊に激減し、クライアントの信頼を取り戻したことでした。

 「会議室の机の上に山積みになったファイルの向こう側から、私を見つめるクライアントの冷たい視線は、心底恐ろしかったわ~」 「これじゃあ次回、クライアントの前に立てないわ!! との恐怖心から、それこそ夜も寝ないで必死に考えたのよ!!」とおっしゃる先生の言葉に、コンサルタント業の厳しさとやりがいを感じたものです。

 のちに業務分類表は『AIOSベース』となり、『AIOS標準ver.(間接業務の生産管理システム)』および、『AIOS S・Mver.(間接業務の品質管理システム)』へと進化しました。この2つのAIOSを合わせた『組織マネジメントシステムOMS)』の自社構築メソッドの普及に今日私が専従しているのも、もとをただせば前述の経緯によるものです(TMS研HPの「profile」内の「TMS誕生までの経緯」をご覧ください)。

 私は現在5Sセミナー講師はやっておりませんが、コンサル先では必ず5S指導を行っています。トップダウン活動によるOMS構築と並行して、スタッフ間に「やらされ感」が発生しないようボトムアップ活動による5Sを展開してもらいます。OMS、5Sとも事前にアンケートでそのニーズを確認し共有化してから行うので、失敗したことがありません。

 私の初クライアントの美容室チェーンでは、5S不良が新人をいじめる格好の材料となっており、10年間で20人ものスタッフが涙ながらに離職しておりました。次々と辞めるスタッフに経営者は頭を抱えており、1店舗がつぶれる等の打撃を与えていました。それがわずか12回の5S指導により劇的に改善し、①離職者ゼロ ②職場風土改善 ③顧客満足度向上会社業績向上 等の成果を上げました。その後、経営者の代替わりにも成功しました。

 次のクライアントである特別養護施設は、プロになる前に市民講師として登壇した『家一軒丸ごと5Sセミナー(全10回)』の受講者の紹介によるものでした。この受講者(50代女性)は物に対する執着心が強く、「残すかどうか迷ったものは捨てなさい!!」 「捨てて、捨てて、捨てまくりなさい!!」という私に共感できず、講義のあと1時間私に食い下がってきました。私も最後には面倒くさくなり「そんなに物が捨てられないのなら、家が火事にあったと考えれば諦めがつくのではないですが?」と言ったところ、彼女はギョッとした顔をして私を見つめました。

 「この人は次回からもう来ないだろうな」と思いましたが、次回彼女は私より先にセミナー会場に来ていました。彼女が言うには「前回の先生の発言はあまりにひどいと思い、職場の施設長に「「火事にあったと思って諦めなさい」と言われました」と話したら、施設長に「その先生は本物だから、次回も受講しなさい」と言われました」

 「だまされたと思って先生の言う通り物を捨てまくったら、東京から帰省した大学生の長男に「母さんでもやればできるじゃん!!」とほめられました(笑)」とのことでした。この方の紹介でこの施設のコンサル受注に至り、彼女は私の師範代として5S事務局を務めてくれ、コンサルは大成功しました。従業員定着率と満足度の双方が向上し、顧客満足度も向上、今ではちょっとやそっとでは入所できない人気施設となりました。

 最後に紹介する事例は、施工管理会社の5S活動です。当初事務所の5S状況は悲惨なものでした。従業員アンケートにより5Sのニーズは確認したものの、スタッフが5Sの価値を全く理解していないため、誰に事務局を務めてもらうか悩みました。スタッフ全員と面接し前職について尋ねたところ、TSUTAYA(書店兼DVD・CDレンタル店)の元店長がおりました。

 彼を事務局に据えた5Sが失敗するわけがありません。職場への不満から反抗的かつ挑発的な態度で浮いていた彼も、5S事務局を通してスタッフに受け入れられ、社内に居場所ができました(翌年課長に昇格)。その後採用した3人の新人も全員が定着し職場風土も改善しました。私を呼んでくださった創業社長は世を去られましたが、同社HPを見ると私とバリバリやりあった新社長F氏の肝いりの活動として、5Sが継続していることを知りました。社会貢献活動として月一回社屋の周りのゴミ拾いも実施しているとのこと、コンサル冥利に尽きます。

 以上3つの事例により、5Sの効果についてお話ししました。業務の生産性・品質および会社業績の向上、従業員定着率および満足度の向上、顧客満足度向上、職場風土改善等、5Sは何やら『万能薬』のような感じで、「たかが5S」とお考えの方には信じられないことでしょう。

 私がその普及をライフワークにしている『組織マネジメントシステム(OMS)』が会社の「心臓」なら、各部署は「手足・臓器」に相当します。心臓と手足・臓器の双方の機能が健全でないと、身体(会社)は健全になりません。各部署の機能は、与えられた経営資源(人・物・金・情報)をフル活用することによって達成されます。4つの経営資源のうち「物」「情報」の2つをフル活用するための手段こそ5Sなのです。また5Sを通して御社の未来を担う人財も育ちます。5Sとは一時のはやり・すたりでやったりやめたりする類のものではありません。

 あなたは「5Sの価値」を正しく認識していますか?

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