⑩TMS研メルマガ一覧表

メルマガ第122号

あなたは「見える化」推進派or抵抗勢力のどちらですか?

 皆さんは祇園(京都)のお茶屋さんで遊んだ経験はおありですか? お座敷で食事とお酒を飲みながら舞妓・芸妓の舞と演奏そして座敷芸を楽しむ究極の娯楽です。その敷居の高さたるや、金をいくら積んだところで「一見さんはお断りどす」でも有名な日本を代表する花街です。

 そんな秘密の花園的存在の祇園のお茶屋事情について書かれた本が2003年に出版されました。『祇園の教訓』(岩崎峰子著、幻冬舎刊)です。祇園の名妓と言われた峰子姐さんが、一部の好事家のみに秘匿されていたお茶さんの実態について書いた本です。彼女は花街文化を後世に語り継ぐために毎年講演会を開き、また得意の英語を活かして海外に向けて紹介も行いました。

 私はこの本を読んだとき、祇園の実態とそこで働く人たちの気持ちや心意気を知り、親近感と好感を持ちました。そして「いつの日か俺もお茶屋に上がれるような男になってやるぞ!!」と思ったものです(諸般の事情で、未だ果たせぬ夢となっていますが…)。これが祇園の実態の「見える化」のメリット(光)です。しかし伝統と格式を重んじる祇園で、同書は好意的に思われませんでした。むしろ一種の『暴露本』と捉えられ、口外無用の花街の流儀に反することから、著者の岩崎さんは祇園では煙たがられているそうです。こちらが「見える化」のデメリット(影)です。
【注】 岩崎峰子(wikipedia) → 岩崎究香 – Wikipedia

 それから16年後、コロナ禍により全国の歓楽地帯の灯が消えます。中でも社用族を主な客層とし、日本一高いテナント料および人件費である『銀座』は、存続の危機に陥りました。バブル崩壊・リーマンショック・東日本大震災等を乗り越えたお店も、何回も『緊急事態宣言』が発出され、終わりの見えない今回のコロナ禍で運転資金が底をつき、心の折れた経営者が続出しています。

 そんな銀座を救うべく、一人のママが立ち上がりました。『銀座NANAE』のオーナーママ唐沢菜々江さんです。20年前に『¥マネーの虎』という人気番組があり、我が家も夫婦でよく見ていました(買い物に行った際、「あれも買おうよ!!」と言ったら「ダメ!! ノーマネーでフィニッシュ!!」と番組の決め台詞で切り返されたものです(苦笑))。その『¥マネーの虎』の続編がYouTubeで始まり、そこで菜々江ママの存在を知りました。

 人影が消え、ネオンの灯もまばらとなった銀座の惨状を目の当たりにした菜々江ママは、「自分をここまで成長させてくれたこの街、銀座に恩返しがしたい!!」との一心から行動を開始します。銀座の高級クラブの実態について、YouTube動画で「見える化」「共有化」を始めたのです!!
銀座ななえチャンネル → (1) 銀座ななえチャンネル – YouTube

 その「見える化」の徹底ぶりはすさまじく、ご自身がジムで身体を鍛える様子や、ご自宅で不要となったバッグ類を5S(断捨離)し換金する様子等も放映しているほどです。お店で着飾っている姿だけではなく、身を削り、舞台裏まで公開しています。その潔さにほとほと感心します。なにやら男気すら感じます。

 菜々江ママの奮闘努力の甲斐あって、「見える化」は次のようなメリットをもたらしました。
新規のお客様が増えた。 ②「このお店でぜひ働きたい!!」という優秀なホステスや黒服(男性スタッフ)が全国から応募してくるようになった。 ③他店のママからも、YouTube等のSNSで情報を発信する人が続出した

 上記①は、今まで敷居が高いと感じていた潜在顧客の心理的バリアを取り除く効果によるものです。②は菜々江ママの人柄が伝わったためで、従来関東地方のみであった同店の求人エリアが日本全域に拡大する効果がありました。③こそ菜々江ママが期待していた効果で、フォロアーの出現により銀座全体の底上げが期待できるようになりました。

 なにより、紳士の高嶺の花であり、あこがれの地でもある秘密の花園『銀座』の実態を知りたい!!というニーズは高く、菜々江ママの動画チャンネルの登録者数は14万人にも上ります!! この潜在ニーズを顕在化させただけでも、銀座に対する恩返しとしては上々の戦果です。

 しかしそんな菜々江ママに対し、古株のママたちから非難中傷が上がりました。彼女たちの言い分は、祇園の峰子姐さんに対するものと全く同じでした。「よく分からないところが銀座の価値なのに…」「あんなところ(姿)まで公開して、みっともないったら…」等々です。菜々江ママは「高い」「高い」と言われる、高級クラブの料金体系まで公開しているため、後ろめたいところのあるママさんからすると「余計なことしてくれるな!!」という思いがあるのでしょう。

 出る杭は打たれる同調圧力の支配する日本社会ではよく目にする光景で、経営環境の変化についていけない「負け犬の遠吠え」とでも思って聞き流していればよいだけです。銀座存続の危機という大ピンチを前に敢然と立ち上がった菜々江ママが、アフターコロナ時代の勝ち組になることは間違いありません。あなたが正しかったことは必ず証明され、「中興の祖」として銀座の歴史の1ページを飾ります。その日が来ることを信じ、頑張れ!! そして負けるな!! 菜々江ママ!!

 ところで、読者であるあなたは「見える化」の推進派or抵抗勢力のどちらですか?

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