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メルマガ第110号

あなたは「同調圧力」に負けてはいませんか?

 いつの間にか定着した日本語に「KY」というものがあります。その意味は「(場の) 空気が読めない」です。この言葉が象徴する通り、我々日本人は「場の空気」を非常に大切にします。カラオケで盛り上がっている席上で、『わかれうた (中島みゆき)』 『朝日のあたる家(ちあきなおみ)』『さよなら(オフコース)』『駅 (竹内まりや)』『友達の歌 (中村中)』 『蝶 (柴田淳)』『懺悔の値打ちもない (北原ミレイ)』『織江の唄 (山﨑ハコ)』等を歌う勇気(?)のある人はめったにいません。

 忘年会の二次会でもしこれらを歌ったとしたら、翌週の月曜からあなたを取り巻く職場の人間関係は、劇的に変わることでしょう(笑)。たとえ社長や部課長が歌ったとしても同様のことが起きます。たとえ組織トップと言えど、協調性を重んじる日本社会において「場の空気」に逆らうことは難しいのです。

 この日本人の国民性を逆手に取った営業マンのセールステクニックがあります。最近あまり見かけなくなりましたが、新聞拡張員がご自宅に来たと仮定してください。あなたはどちらが営業成績がいいと思いますか?

【A】「角川さんの家に来るまで訪問した全ご家庭で、〇△新聞をご契約いただいています」
【B】「この団地で〇△新聞を取っていないのは角川さんの家だけですよ? 大丈夫ですか?」

 正解は【B】です。理由は、このセールストークを聞かされる人に「同調圧力」が働くからです。場の空気を読み、その空気に従うよう暗に強要することを「同調圧力」と言いますが、これは日本社会を支配する力を持っています。1989年の社会党のマドンナ旋風、2005年の郵政解散後の「刺客」による自民党の大勝、2009年の民主党への政権移動等は、今冷静に考えると「同調圧力」が大きく働いたことに気付くはずです。我々日本人は「場の空気」に逆らえない民族なのです。

 この「同調圧力」が日本の国民性と化した理由は、江戸時代に農民が85%を占めたことによる、いう説があります。日本社会は基本的には「農村」の延長線上にあります (明治維新後に出現した工場は「職人文化」の延長線上にあります)。農村では田植えや稲刈り等、村民が一丸となってやる作業が多く、そういった場合「足並み」を乱す者の存在は許されません。田植えを例にとると、全員が横一列に並んで植えないと縦横が揃わず、日本人の美意識を満たすことができません。また単調かつ重労働なので、みんなで田植え歌でも歌いながらやらないと、辛抱強い昔の農民でも嫌になってしまうのでしょう。

 この「同調圧力」に逆らうと村社会では生きていけず、良くて村八分、悪くすると他所払い、最悪一家皆殺しになってしまいます。この「制裁」が怖くて、他の民族に比べ日本人は同調圧力が強い、とも言われています。

 ここで問題なのは、21世紀になった今でも依然として日本社会には同調圧力が存在している点です。学校における「いじめ」などはその典型です。いじめの対象となる生徒は、その他大勢となにか異なる点をもつ (目立つ) 生徒です。昔は成績の悪い生徒や容姿の劣る生徒がいじめの対象になりがちでしたが、今日では成績のいい生徒や容姿に恵まれた生徒もその対象となっています。その理由は「目立つから」「鼻につくから」です。

 いじめに参加しないと自分が次のいじめの対象となるため、たとえ友達であろうと心で詫びながらいじめざるを得ない、などという悲劇も発生しています。「教育機会の平等」という原則があるため、素行の悪い生徒を排除できない公立校を見限り、私立の中学校・小学校に我が子を入れたがる保護者が激増している背景はここにあります。

 今日学級委員や生徒会役員のなり手がいないのも、目立ちたくないからです。息子(21歳)が小学6年生になった時、学級委員が存在しないことを不思議に思い、授業参観後の懇談会席上でその件について担任の先生に質問してみましたが、明快な回答は得られませんでした。学校側としては、いじめの原因になりそうなものは、あらかじめ排除しておきたいのでしょう。

 その後、息子が中学校に進学しても学級会はありませんでした。こんなことでは、この国によいリーダー (政治家・経営者・管理職) は生まれないのではないか? と本当に心配です。よいリーダーとは、その必要があれば「同調圧力」に屈せず、組織を正しいと信じる方向へ導ける人のことです。ちなみにその逆は、政治の世界ではポピュリズム(大衆迎合主義)と言われ、軽蔑されています。

 そんな国民性の中、「100年に一度の経済危機」において、会社のかじ取りは大変な仕事です。大きく舵を切る必要に迫られた時、船長 (経営者・部課長)が船員(従業員・部下)の発する「場の空気」や「同調圧力」を気にしているようでは、舵を切るタイミングを逃し、船(会社・部・課)が暗礁に乗り上げてしまうからです。

 コロナ禍の影響で、航路の先も見えない暴風雨の中で船が難渋している今こそ、船長の「腕」と「度胸」が試されています。船が無事目的地に着くかどうかは、ひとえに船長が決断するか否かにかかっています。そんなあなたを、背後から不安げに見つめる部下がいることもお忘れなく。

 あなたは「同調圧力」に負けてはいませんか?

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