⑩TMS研メルマガ一覧表

メルマガ第118号

あなたに「出る杭」になる勇気はありますか?

 メルマガ第110号「あなたは同調圧力に負けてはいませんか?」でもお話しした通り、日本人は「横並び」を重視します。その理由は、日本社会が基本的に「農村社会」だからです。

 今どき「田植え」を手作業でやっているのは天皇陛下ぐらいだと思いますが、農機具普及以前は、人海戦術でやっていました。田植えする順番を 「今日はAさんのところ、明日はBさん、明後日はCさん」のように決め、村人全員が各家の田んぼに集合し、横一列に並び田植え歌を歌いながら苗を植えたものです。

 こういった農村では「出る杭」は嫌われます。同調圧力に従わない者とみなされるからです。そして「出る杭」には①村八分 ②他所払い(村落からの追放) ③一家皆殺し 等の罰則が課せられます。日本の学校の闇である「いじめ」の始まりが「シカト(無視)」であるのも農村社会の名残りです。

 そんな社会風土は、国民性にも大きな影響を及ぼしました。「リーダー不在の集団意思決定プロセス」がその最たるものです。諸外国は大統領・首相に意思決定権がありますが、我が国では憲政史上最長期政権であった安倍首相ですら意思決定権がなく、その陰で二階幹事長と今井補佐官が首相を操っていたと言われています。

 また農村社会日本に対し、他の先進国はみな狩猟社会です。リーダーが強力な権限で国民をけん引する社会風土です。人種(他はすべて白人)・文化(同キリスト教)に加え、意思決定プロセスまで違う日本が、先進国の中でどれくらい異質な国であるかは、想像に難くありません。他国のリーダーがみな飛び切りの「出る杭」であるのに対し、我が国の首相の存在感のなさは突出しており、首脳会談席上で「あなたはいったいここに何をしに来たのですか?」と見下されています。日本国民の一人として、本当に情けなく思います。

 明治維新以来、積極的に欧米から文化や技術を学び、国民の奮闘努力の甲斐あって、欧米以外(非白人)の国の中で唯一、第二次大戦前に産業革命を成し遂げたこの国、日本でなぜ「出る杭(優秀なリーダー)」が生まれないのでしょうか?

 その理由の一つはリーダーの報酬の低さにあります。首相の年俸が4,049万円であることに代表される通り、我が国の組織トップの報酬は諸外国に比べ異常な低水準にあります。日産のカルロス・ゴーン元社長の汚職事件の根本原因もここにあります。「ハイリスク・ローリターン」では、よほど使命感に満ちた人以外リーダーになりたがりません。まして「ハイリスク・失敗したら罰則あり」では、いったい誰がリーダーになるというのでしょうか?

 高校三年の時、私の周囲に座っていた4名は成績優秀で、全員東京大学へ進学しました。そんな彼(彼女)たちと日常的に接していると、日本人エリートの考え方がよく理解できます。

 特徴的なのは、徹底的にリスクを忌避することです。リーダーにならないこともその一つであり、生徒会長など誰もやりたがりません。リーダーを嫌う理由は意思決定というリスクを取らなければならないからです。日本のエリートは、安全地帯からリーダーを遠隔操作することを好みます。文楽人形がリーダーなら、人形を操る黒子が日本のエリートです。彼らが官僚(政治家を操る黒子)になりたがる理由もこれでお分かりいただけるでしょう。

 しかし人生では実際になってみないと(やってみないと)分からないことが多々あります。リーダーの魅力度が低いわが国でも、いざリーダーになってみるとそこそこの権限はあることが分かります。腹をくくってその権限を行使してみると、意外にできることはあるのです。リーダーさえその気になれば、背後で操る黒子を「あっ!!」と驚かせる成果をあげることができます。経験者の私が言うのですから、間違いありません。

 日立市の何百世帯もが住む社宅で育った私は、わんさかいる子供たちの中で「3月生まれ・運動神経ゼロ」というハンデを抱え、いじめられないようなりを潜めていました。しかしそんな存在感ゼロの私が、ある日突然リーダーになります。新築ブームで皆引っ越してしまい、6年生が私だけになったためです。

 人財流出による組織の弱体化を知った中学生たちが、遊園地を占拠し野球を始めました。遊び場を奪われた下級生たちが悲しそうな顔をしています。そこで私は一計を案じ、『ビワ爆弾(ビワの実に爆竹を3本突っ込んだもの)』を開発し、下級生に投げる訓練を始めました。そしてある日、遊園地に現れた中学生の頭上で、不意に多数のビワ爆弾がさく裂します。この奇襲攻撃により中学生の撃退に成功し、遊園地を奪還しました。

 翌年私の親も家を建て、誰一人知り合いのいない別の学区の中学に入学した私は当初おとなしくしておりましたが、ひょんなことから人気者になり、生徒会会長に選ばれました。本当はヘタレでオタク、プラモデルとアニメが趣味だった自閉症気味の私が、全校生徒1,000人を前に話し、以前お話ししたような政策を立案・遂行するリーダーになってしまいました。

 社会人となってからも、リーダー人財が慢性的に不足している日本社会で、私は結構重宝がられました。前職(700人規模のメーカー)が法令違反で政府に潰されそうになった際、一担当者だった私が会社のNo.2(常務)に権限を委譲され全課長にAIOS作成を指導、主力製品の無期限出荷処分の解除に成功したことがありました。

 日本のエリートはリスクテイクを嫌がり、汚れ仕事を忌避するので、私のような者にお鉢が回ってくるのでしょう。皆さんご想像の通り、絵にかいたような「出る杭」であった私に対する「いやがらせ」は当然ありました。当初気にしていましたが、ある時から考え方を変えました。

 「私自身が中途半端な高さの「出る杭」だから叩かれるのだろう。いっそのこと途方もない高さの杭になり、叩こうとしても手の届かないようにすればいいじゃないか!!」 そう考えることによって、私の存在を認めない組織(人)に対する恨みは消え、周囲にその存在を認めさせるに至らない自身のスペック不足解消に専念するようになりました。この逆転の発想があったからこそ、今日コンサル業界の片隅にささやかながら私の居場所があります。

 ところで前職(資本金36億、年商300億)を倒産の危機から救った私に対する報酬は「ゼロ」でした。件の常務から「角川君、ありがとう!!よくやってくれた!!」の一言もなく、昇格・昇進・昇給もありません。せめて社長賞特別賞でも出るかと思いきや、「本年度は業績不振につき、社長賞は実施を見送ります(by経理部長)」との通達が出る始末です。

 子会社が倒産すれば相当な痛手を負ったであろう親会社の社長からも、礼状の一本もありません。徹夜でAIOS作成マニュアルを作り、年上の課長たちに火花の散るようなやり取りで指導した私に、結局のところ何の報いもありませんでした。ひどい話ですね。

 話は変わりますが、歴史教科書には数多くの「出る杭」が登場します。なかでもキリスト教の教祖イエス・キリストは特大の「出る杭」であったことは間違いありません。妻(敬虔なキリスト教徒)に連行されカトリック教会に行くと、礼拝堂の前に十字架に張り付けられたイエス像がありました。神父の説教を聞きながら、私はイエス像に問いかけます。「あなたの人生は、何か報われたのでしょうか?

 当然返答はないのですが、私はこう考えました。「俺も前職では親会社・経営者・上司・同僚たちを敵に回しバリバリ戦ったつもりだが、イエス・キリストに比べるとまだまだ手ぬるかったな」 「はりつけにされて殺されるくらいやってやればよかった」 「まだ生きているということは、神様が俺にまだ期待しているっていうことだな」 「よ~し、見ていろよ!! 俺もはりつけの上、火あぶりになるまでやってやるぞ!!」 そう決意し教会を後にする私を見て、イエス像は苦笑していたことでしょう(笑)。

 現在世界中が「なぜ日本人は東京オリンピックを中止できないのか?」不思議に思っています。ワクチン接種率がOECD諸国中ダントツ最下位で、強行開催すれば何が起きるか誰の目にも明白なこの国に、違約金(1.3兆円)を支払ってでも国民の生命を守る気概のある政治家がはたして存在するのかが注目されているのです。そんな政治家がいないことが判明すれば、今後世界各国が日本に対し無理難題を次々と突き付けてくるに違いありません。

 逆に考えれば「東京オリンピック中止」という「火中の栗」を拾う政治家がもしいれば、その人は国民から圧倒的支持を得て次期首相となることでしょう。まさしく「ピンチはチャンス」です。

 日本企業の多くが、コロナ禍による「100年に一度」の大不況の渦中にあります。そんな会社存続の危機に際し、「組織マネジメントシステム自社構築」という「火中の栗」を拾う勇気ある方が当メルマガ読者の中から現れることを、私は心の底から期待しております。

 あなたに「出る杭」になる勇気はおありですか?

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