⑩TMS研メルマガ一覧表

メルマガ第16号

【事務所編】御社はボトムアップ活動の本当の「すごさ」をご存じですか?

 私が現場5S活動の社内コンサルとして現場を巡回指導しているときの話です。電力ケーブル工場のご意見番K原氏(前回紹介した事例の主人公)から「この前総務に呼ばれて久々に総合事務所に行ったんだけどよ、棚の上に物は置いてあるわ、書架はごちゃごちゃだわ、机の上は汚いわで大分5S状況が悪いなぁ。現場を指導してくれんのもありがたいけど、たまには事務所も指導したらいいんじゃねーの?角さん」と言われてしまいました。その後、自分の職場である総合事務所(約100名在勤)に戻り、改めて5Sコンサルの目で見てみると、K原氏の言う通り確かにひどい状況です。「灯台下暗し」「医者の不養生」「紺屋の白袴」等々の言葉が私の脳裏をよぎりました(苦笑)。

 それとはまた別の日のことです。親会社から転属してきたばかりの副工場長(役員)に呼ばれ「お前は現場5Sの指導をしているらしいが、総合事務所の書庫についてどう思ってるんだ?」と聞かれました。正直、痛いところを突かれた思いでした。その書庫(通称:スーパーハウス)とは、照明も切れたままで昼なお暗く、総合事務所全7部署がなんのルールもないままにただただ書類を突っ込んでいる、いわば管理の治外法権のような場所だったからです。私自身何度かそこに懐中電灯片手に潜入したことがありましたが、そこにあるはずのファイル発見率が3割に満たないという恐ろしい書庫でした。

 そのような経緯で現場と並行して事務所も5S指導対象となったわけですが、今回の5S指導箇所(総合事務所)は相当手強いと判断した私は素手で立ち向かえば100%失敗すると思い、中部産業連盟の小林啓子先生の『ファイルの整理整頓方法』セミナーを受講しました。小林先生に教わったことは、業務を大・中・小の三段階に層別し体系づけた『業務分類表』を作成し、小分類に該当するファイルだけ残しそれ以外は捨ててしまいなさい、という画期的な整理整頓方法でした。

 ファイル5Sのノウハウを入手した私は副工場長にプロジェクトオーナーになってもらい、事務所5Sの推進組織『職場快適化サークル』を結成しました。メンバー選出に際し、活動対象である総合事務所の「おかしさ」に気付ける人材と言う理由で、①入社2~3年②現場上がり③中途採用④女性⑤外国人を各職場から12名を指名しました(本当は派遣社員の方も入れたかったのですが、諸般の事情で断念しました)。

 活動テーマについては、最初から「5S活動ありき」では「やらされ感」がメンバー間に発生すると考え、メンバーにアンケート調査を行い「何に困っているか」を聞きだし、それらを解決する目的で活動を行うこととしました。メンバーから精度の高いデータ(本音)を引き出すためにアンケートは無記名式とし、上司経由ではなく事務所内に設置した回収箱(施錠)に投函してもらいました。アンケートの内容は、軽い内容の質問に始まり徐々に重い内容になるようにし、「はい」「いいえ」で答える質問50問プラス筆記回答の質問2問の構成としました。質問数を多くしたのには理由があります。私が総務部で安全衛生委員会事務局だった時に全社員を対象にメンタルヘルスチェックテストを実施したことがありました。東京(御茶ノ水)にある業者の社長さんと打ち合わせした際に、同社のテストの質問数が50問もあると聞き、どうしてそんなに多いのかその理由を聞くと「角川さん、このくらいたくさん質問しないと日本人はなかなか本音を言わないものなんですよ」と言われ、なるほどなぁと感心した経験がありました。その手法を今回の『従業員アンケート』に活かしたわけです。

 その後メンバーから回収したアンケートを集計、「はい」「いいえ」で答える50問に対する回答結果を「悪い順」と「良い順」の2パターンでランキング表にしたところ、総合事務所の「悪いところ」「良いところ」が明確になりました。そして個々の問題点について①原因分析②対策立案を行いました。

 その結果『職場快適化サークル』で行う活動は当初の予定通り①総合事務所の5S②その他、自分たちの力で解決可能な諸問題、の2つに決定しました。この手順を踏んだため、心配していた「やらされ感」は全く起きませんでした。まず最初に、女性メンバーから寄せられた『お茶当番』に対する不満を解決するところから活動を開始しました。『お茶当番』とは、昼休みの30分前から当番の女子社員2名が、部課長以上の昼食(仕出し弁当)の準備と配膳を行う係のことです。会社創立以来長年女子社員がやらされていたこの業務(?)を廃止することにより、サークルメンバーに一体感と「やれば出来るじゃないか!!」という気持ちが生まれました。

 その後の活動内容は次の通りです。詳しい内容につきましては、11/13(金)のセミナーでお話しいたします。

  1. インフルエンザ発生予防活動
  2. 共用FAXの使用ルール制定
  3. 事務机の5S
  4. 文房具管理システムの確立
  5. ファイルの5S
  6. ニュースレター『かいてき通信』の発行

 1年間に亘る当サークルの活動結果は次の通りです(メンバーに再度アンケート調査を実施)。

【直接効果】

  1. ムダ業務廃止による工数削減(676,000円/年の削減効果)
  2. 文房具購入費用の削減(64,420円/年の削減効果)
  3. 事務机5Sによる業務効率向上
  4. ファイル5Sによる業務効率向上および書架削減による空スペース創出
  5. 事務所の問題点の「見える化」

【間接効果】

  1. 人材育成(サークルメンバー)
  2. 達成感による従業員の意欲向上(サークルメンバー)
  3. 職場環境改善
  4. 部署間の「壁の高さ」低下(社風改善)
  5. 業務分類表(AIOS)作成による業務の「見える化」促進

 これらの活動は全て就業時間内に行い、人件費以外の経費は殆ど発生しませんでした。従業員が心から「やりたい」と思うボトムアップ活動の「すごさ(費用対効果)」を感じてもらえると嬉しいです。経営者や管理職の皆さん、世界一のモチベーションを誇る日本人スタッフを使って事業を行っているなら、ボトムアップ活動をやらないのは経営上大きな損失(もったいない)ですよ!!

 御社はボトムアップ活動の本当の「すごさ」をご存じですか?

Sitemap

Contact us

お気軽にお問い合わせください。
PAGE TOP
PAGE TOP