私は派遣社員として働いた経験が7回あります。結婚前の若い時分と、前職を早期退職し独立開業後、この仕事一本で家族を養えるようになるまでの期間です。また前職では派遣社員数名を部下として持った経験もあります。そのため従来より派遣社員を取り巻く諸問題に対し全然他人ごとと思えず、常に自分自身の問題として向き合ってきました。
若いころは人生経験も少なく、またその気になればいつでも正社員になれたため、社会勉強と思い色々な会社を転々としました。独身だったこともあり、今振り返ると実にお気楽な人生でした。時代もバブル景気真っ只中、有り余る体力を活かし1日17時間労働、休日は月2日という恐ろしい精勤ぶりで、月収は手取りで50万円を超えていました。実家に届いた給与明細を見た父(当時上場会社の製造部長)が「真也のやつ、俺より給料がいいじゃないか!!」と嘆いていたと母から聞きました。派遣社員でも夢と希望を持てた、良い時代でした。
それから正社員時代20年を経てフリーとなり、再び派遣社員に返り咲いた(?)時、派遣社員を取り巻く環境は相当悪化していました。まず給料が下がりました。一月働いても、手取りは15万円に届きません。また扱いも悪くなりました。以前は人間として扱ってもらった記憶があるのですが、いまではうっかりすると正社員の不満や怒りの「はけ口」です。仕事内容も危険できついところばかりです。「逃げる権利のある奴隷」とぃった気すらします。
何より悲しいのは、今まで培ってきた知識やノウハウを活かすことができず、ただただ低廉な労働力としてのみ自身の存在価値が認められている、と言う事実です。自分の子供くらいの年の若い社員にこのように扱われるのですから、中高年派遣社員は「やる気」が出るわけがありません。まさしく「人財の飼い殺し」状態と言えます。
「売り言葉に買い言葉」と言いますが、こんな処遇と扱いでは派遣社員に愛社精神など生まれるはずがありません。このことによる弊害は、生産性・歩留り・定着率等の数値データにはっきりと表れています。正社員にあって派遣社員にないもの、それは「やりがい」です。私の数々の経験から、そう断言できます。
しかしながら、今や派遣社員(非正規雇用労働者)は全労働者の37.8%を占めるご時世です。派遣社員が活用できるかどうかは、会社利益を大きく左右する大問題なのです。それなのに、派遣社員をこのまま放置しておいていいのでしょうか? 「そんなのどうでもいいんじゃねぇ~の、どうせハケンなんだし…」と言う方は、ここでお別れしましょう。さようなら。ついでにメルマガ配信も解除申請してください。
ここから先は、派遣社員にどうしたら「やりがい」を感じてもらえるか真剣に考えている方だけにお話しします。まずは添付①『仕事をするうえで大切だと思うこと』を見てください。日本人の職業観が、地理的に近しい東南アジア内においてすら特殊であることがお分かりいただけましたでしょうか? 他国が「報酬と待遇」が一番なのに対し、日本は「仕事内容と人間関係」が一番です。仕事内容と人間関係は、多少乱暴ですが「やりがい」と置き換えられます。気の合う仲間と好きな仕事をしたい、というのが日本人の理想とする職業観なのです。これは正社員も派遣社員も全く同じです。
ここまでの説明で、現在派遣社員にやりがいがまったくない理由が皆さんにもお分かり頂けたことと思います。仕事を通して自分の人間性を高めようと真剣に考えている世界唯一の民族、と言われる日本人の特性がまったく活かされていません。その原因は、受け入れ先である会社の派遣社員に対する考え方 (安価でいつでも切れる都合のいい労働者)が間違っているためです。
正社員になくて派遣社員(特に中高年)にあるもの、それは他社(異業種)経験です。これこそ新卒入社で一社しか知らない正社員にない派遣社員の「強み」なのです。つまり派遣社員とは、他社(異業種)の知見とノウハウを持った、いわば社の「宝」なのです!! 彼らにただ単純労働させているだけでは、文字通り「宝の持ち腐れ」です。
この「強み」を引出し、派遣社員には「やりがい」を、受入企業には「利益」をもたらすシステムこそ『改善報告活動』です。前職で改善提案事務局だった私は、月200枚以上提出される改善シートすべてに目を通していました。市が派遣元のシルバー人材の方で、格調高い内容の改善をする方がいたので現場を訪ね前職を伺うと、なんと某都市銀行の元融資課長だったことが判明しました!! すぐに経理課長にそのことを伝え、その後色々とご指導を賜りました。会社も大助かりでしたし、この方もさぞやりがいがあったことでしょう。
私が気が付かなければ、この方は雑草取り作業者のままでした。恐ろしいことです。きっと御社の派遣社員の方にも、この方のような「宝」がいるはずです。本業(経営コンサルタント)を隠して、3年前まで某事業所でタマゴの選別作業者として活躍していた私が言うんです、間違いありません!!(笑)
メルマガ第83号『御社に社内差別はありませんか?』(添付②)でご紹介した事例のような、従業員が給与・待遇に不満があり、やりがいの低い仕事に従事している職場で「やる気」を出してもらうためのシステムとして『改善報告活動』は劇的な効果を発揮します!!
御社は派遣社員の「やる気」と「定着率」向上方法をご存知ですか?