⑩TMS研メルマガ一覧表

メルマガ第145号

御社は『DX』というゲームチェンジ後に生き残れますか?

 先日『ゲームチェンジの世界史』(神野正史 著、日本経済新聞出版 刊、1,800円)を読みました。新たな時代を創った15の非常識について解説した本で、帯広告には以下のように書かれています。「「ゲームチェンジ」とは、従来の枠組・常識・ルールがまったく通用しなくなること」 「繰り返される泰平の世と激動の時代。人類は数々の「ゲームチェンジ」を経験しある者は繫栄し、ある者は没落していった。世界はなぜ変わったのか?我々は変化に耐えられるのか?ヒントは歴史の中にある」

 同書で紹介された「15の非常識」とは、農業・鉄器・紙・活版印刷・産業革命・核兵器・インターネット等です。こられの「非常識」はゲームチェンジ後の今日、どれも「当たり前」「常識」となっている点にご注目ください。今でこそ常識となったシステム・製品も、そうなるまでには先人の大変な苦労がありました。

 P199の「ゲームチェンジに伴う悲劇」にはゲームチェンジ原則⑨として「ゲームチェンジが起こると、それを理解できないもの者・受け入れられない者が一定数現れ、歴史の流れを押し戻そうとする」と書かれています。いわゆる「抵抗勢力」のことです。この「抵抗勢力」のすさまじい抵抗によって、ゲームチェンジ推進者の中には社会から抹殺されたり、実際に命を奪われた人も数多くいました。ゲームチェンジの歴史とは、まさしく死者累々の世界なのです。

 皆さんの中には「そんなリスクを冒してまで、ゲームチェンジを推進しようとする人の気が知れない」「そんな勝算の薄いことをやるくらいなら、俺は上に言われたことをやるだけの人生で十分」という方もいらっしゃると思います。前職で業務改革事務局だった私は、社内は敵だらけで改革が暗礁に乗り上げ絶望感に打ちひしがれていた時、ふと「俺は一体何をやっているんだろう…」 「俺以外の、もっとふさわしい人がやってくれればいいのに…」と思ったことがあります。当時の私がどれくらい追い詰められていたかというと、散歩中に小学校から聞こえてきた合唱の歌詞が心に刺さり、思わず涙がこぼれたほどでした(特に3番が泣かせます)。
 そうまでして『ゲームチェンジ』を推進しようという人たちの心には「問題解決へのあくなき執念」と「俺がやらなくて誰がやる!!」という熱い想いがありました。そしてその努力が実り、①それまでの「非常識」を「常識」に ②それまでの「常識」を過去の物にした彼らは、これ以上ない達成感を得ました。なすべき時になすべきことをした彼らは『ゲームチェンジ』の成否を問わず、この世を去る時、自分の人生に満足して死んでいったことでしょう。
→ 静かな伝説 竹内まりや 2013/07/23 – YouTube

 ここで話は変わります。添付④-1生産性に関する国際統計をご覧ください。この表から分かるのは「労働生産性が国民の幸福度を左右する」ということです。労働生産性の低い日本では、平均年間労働時間と一人あたりのGDP( 国民の豊かさの指標 )が他の先進諸国と比べ見劣りします。その結果、総合幸福度が58位であることを見れば、世界第3位の経済大国の地位は国民の犠牲によって成り立っていると言えます。

 また、この表で特に注目していただきたい国はドイツです。ドイツは第二次世界大戦で連合軍の徹底した空爆により、日本と同様に国土が丸焼けとなりました。この「戦友」であるドイツ( 旧西ドイツ )と日本は、異なる方法で戦後復興を遂げました。日本はワークライフバラス無視の長時間労働で、ドイツは労働生産性を高めるやり方(SAP社のERP(組織マネジメントシステム)開発等)で、それぞれ先進国に復帰しました。

 国際統計を取り出して以来、日本の労働生産性は先進国中万年最下位ですが、直接業務( 現場 )の生産性は長年世界の上位です。現場は戦前から生産管理部署および生産管理システムによって生産性向上の努力を続けてきたのに対し、事務所には労働生産性を管掌する部署もシステムも今日に至るまで存在しません。これが、間接業務( 事務所 )が全体の足を引っ張っている原因です。

 しかし、まだ諦める必要はありません。我々には対抗手段が一つ残されています。弱点である組織マネジメントを数値データに基づく科学的なものにすれば、日本企業はすぐに蘇生します( 昨今海外の投資ファンドが日本企業を買収した後これを実施し、高値で転売していることからも、その有効性は明らかです )。

 以上をまとめると、日本(企業)の復興プロセスは下記の通りです。

  1. 日本人の幸福度を上げるには、労働生産性を向上させる。
  2. 労働生産性を向上させるには、間接業務(事務所)の生産性を向上させる。
  3. 事務所の生産性を向上させるには、間接業務の生産性管理システム(組織マネジメントシステム)を導入する。

 現在、国策として強力推進している『DX』は労働生産性を劇的に向上させる「ゲームチェンジ」です。30年以上デフレが続く先進国の「落ちこぼれ」日本にとって、負けたら先進国の座から陥落する重要な戦いです。にもかかわらず、日本企業におけるDXの進捗状況は芳しくありません。2020年12月に経済産業省が発行した『DXレポート2 中間とりまとめ』には、実に95%がDXに未着手であり、着手した5%の企業の成功率は14%( 欧米は30% )という驚愕のデータが記載されています。両方を掛けると、日本企業のわずか0.7%( 142社に1社 )しかDXに成功していないことになります。DXが日本および日本企業にとって事実上の「とどめ」となる可能性が高いことに、私は強い危機感と戦慄(せんりつ)を感じざるを得ません。

 とはいえDXの勝者と敗者が選別される2025年の『DXの崖(敗者は二度と立ち上がれない、の意)』は目前に迫っています。我々は今、1945年の敗戦、1991年のマネー敗戦に続くDX敗戦の危機に瀕しています。つまり『DX』とは、日本企業のみならず、国家や国民にとっても最大級の危機なのです。この『国難』を乗り越え、我々は存続することができるのでしょうか?

 ここまでお読みいただいた方には ①なすべき時は今しかない ②なすべきことは労働生産性向上 ③そのためにはDX推進 ④DXを成功させるには科学的組織マネジメントの実現、ということがお分かりいただけたことでしょう。あとはあなたがその気になるかどうかだけです。「かわいい社員(部下)のために」 「自分たちの代で会社をつぶさないために」 「愛する家族のために」 「自分がこの世に生きた証として」等々の理由で「DXというゲームチェンジにチャレンジしたい!!」という方に、TMS研は支援を惜しみません。座して死を待つなかれ! 立ち上がれ、日本企業!!

 御社は『DX』というゲームチェンジ後に生き残れますか?

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