⑩TMS研メルマガ一覧表

メルマガ第46号

御社の本社機能は肥大化していませんか?

 今回『未来工業(株)見学セミナー』講師を引き受けたのを機に、改めて同社について勉強し直すと、同社の経営方針①差別化②経費削減③社員のやる気向上、の3つに限られたマンパワーを集中投下し「徹底的」にやっている(それ以外は極力やらない)ことに気づきました。

 その「徹底度合」は他社の常識をはるかに超えるレベルです。業界や自社の常識に囚われて自由な発想ができなくなっている他社の盲点をつくことこそ、同社の真骨頂と言えるでしょう。「他社が「常識」と思っていることを深堀りすると「お宝」が出てくるぞ!!」と、天国から故山田さんの声が聞こえてくる気がします。

 そんな同社の工場見学は、製造現場や製品倉庫を中心に1時間かけて行われました。見学者の列の最後尾を歩いていた私は、廊下から見える同社の本社機能の事務所を注視していました。女性が多く、楽しそうに仕事をされていました。同社は従業員数780人(単体)の大会社ですが、それにしては事務所の人数がいやに少ないのに気づきました。

 私は前職(中堅部材メーカー・700人規模)在職時に本社総務に籍を置きましたが、同社の本社機能はグループ会社を含めて50人位でした。しかし同社はたったの18人だそうです。私にはとても信じられません。

 私の尊敬する経営学者である坂本光司先生のご著書『日本でいちばん大切にしたい会社2』で、過去6,000社を訪問(2009年現在)されたご経験から「本社機能が全従業員の5%以下ならその会社は儲かっている。10%以上なら儲かっていない」という経験則を述べられています。ちなみに未来工業(株)は2.3%だそうです。御社はいかがでしょうか?

 日本流マネジメント(従業員性善説)の極致である未来工業(株)から学べることは多々あるのですが、業種・業態・会社規模を問わず参考になるのが同社の「本社機能極小化」でしょう。

 「そんなこと、とっくにやってるぞ!! うちは10人分の仕事を8人でやってたらリストラで2人削られ、この間総務部長(兼課長)がメンタル不全で倒れたぞ!! おかげで俺の仕事がまた増えて、今じゃ時間外労働が月300時間以上で死にかけてんぞ!!」 それって10年前の私じゃないですか(苦笑)。

 未来工業(株)は本社機能が極小の人数でありながら、時間外労働がゼロであるところがすごいんです。「極小」だけではないんです。

 「本社機能極小化」に取り組む会社は、実は結構あります。かの日立製作所もその昔、1,100人の陣容を誇り工場地区から「伏魔殿」と恐れられた本社機能を、なんと400人に削減し経営を立て直したことがありました。

 ただし、もともとマンパワーが不足気味の中小企業でこれをやると①メンタル不全者②健康障がい者③業務不良による不祥事、の「3つの悲劇」が発生してしまいます。そうならないためには『業務管理システム』で現状を数値データで把握した後で、発見された問題点に①業務量の平準化②業務量の最小化(ムダ取り+生産性向上)③標準化を行うしかありません。

 同じ敗戦国でありながら、旧西ドイツはいち早く『業務管理システム』を間接業務に導入し、1970年代には先進国中一番短い年間労働時間を達成しています。カヌーイストの野田知祐さんはその著書で「ユーコン川(アラスカ)で川下りしている連中はドイツ人ばかりで腹が立つ」と言っています。

 日本人が「根性」と「気合」の「モーレツ社員」で粉骨砕身して働いている中、ドイツ人は合理的な間接業務管理によって、優雅なライフスタイルを享受していたわけです。なんだか悲しくなりますね。

 管理部門は役所と体質が似ており、経営者が放っておくと自分で仕事を作り出し、肥大化する傾向があります。要注意です。

 御社の本社機能は肥大化していませんか?

Sitemap

Contact us

お気軽にお問い合わせください。
PAGE TOP
PAGE TOP