⑩TMS研メルマガ一覧表

メルマガ第10号

御社の改善提案活動は従業員が心から「やりたい活動」ですか?

 実は私は改善提案活動と縁が深く(長く)、事務局は総務部在籍時に4年、品質管理グループ在籍時に5年経験しています。前職の会社ではもともと総務部が改善提案事務局だったのですが、その理由は「従業員に報奨金を渡す業務は総務部の仕事」というものでした。改善提案活動は明らかにQCサークル活動とリンクしており事務局の一元化を図るべき、と考えた私はQC事務局の品質管理グループを説得し、改善提案活動事務局を移管しました(と書くと簡単に思えますが、担当者の職位で業務移管するのはとても大変でした)。

 その後、会社合併→リストラと荒波が襲いかかり、過労で倒れた経緯は以前お話しした通りです。病院を退院した後、再発防止のためか当時もっとも暇な部署といわれた品質管理グループへ異動となりました。そして2年前に自分で移管した改善提案事務局を再び任じられたという訳です(苦笑)。

 私を総務部から引き取ってくれた部長にその理由を聞くと、「総務時代のお前の仕事を見ると、事務所の言うことなんかこれっぽっちも聞かないうちの現場作業者に、言うことを聞かせる不思議な力があるみてーだからよ、すっかり停滞しちまった改善提案とQCサークルを任せてみっぺと思ってよ」とのことでした。

 「なんですか、「不思議な力」って?」と問い返すと、「お前は安全衛生事務局として実に執念深くシートベルト点検を継続実施して、終いには全員にやらせたろう?それから、全社員にKYT(危険予知訓練)をやって、年間無災害記録を達成しただろう?その力のことだよ」とのことでした。これだけほめられれば、やる気になりますよね。実に人を使うのが上手な部長でした。

 私に「不思議な力」がある理由は簡単です。私自身が元現場作業者だったからです!!世の中を広く見てみたい、という気持ち(今思うと「若気の至り」ですね)から二十代の頃、工場・コンビニ・物流倉庫等を中心に色々な仕事に従事しました。そのような経緯から現場の人の気持ちがよく理解できるので、活動を「やりたい」気持ちにさせることがいかに重要かを知っています。また、そこに注力することによって、これまで成果を上げてきました。この能力はコンサルタントになった現在、とても役に立っています。「人生にムダなし」と齢50にしてしみじみ思います。

 さて再び事務局を仰せつかった改善提案ですが、私は提出されてきた全提案シート(平均200件/月)に目を通し、気になった事例は現場に出向き提出者にヒアリングすることから始めました。その結果、提案シートの書式を含む改善提案制度自体が陳腐化していることに気付き、改善報告活動に切り替えたことは前々回のメルマガでお話しした通りです。その際に、改善提案を出す側も数社私に経験があったことが役に立ちました。

 話は変わりますが、9/11(金)の改善報告活動セミナーで紹介する改善事例(シート)を選ぶため、コピーして保管しておいた良例(および悪例)に目を通していて再認識したことがあります。それは、改善提案活動が活性化するか否かは事務局次第、ということです。事務局当時の私は、制度改革の他に次のような地道な活性化活動も実施していました。参考までにご紹介します。

  1. 改善シートに激励やアドバイスの事務局コメントを記入する。
  2. 直接本人のところへ行って事例を説明してもらい、「よく思いつきましたねぇ」と感心してみせる。
  3. 提出者の上長のところへ行き、提出者を褒め、改善シートに上長コメントを書いてもらう。
  4. 初めて提出した人に『改善のECRS』、2回目の人に『改善の12定石』、3回目の人に『改善の定石 一覧表』を直接手渡す。
  5. 『改善ボード』を各現場に配布し、改善提案活動の情報基地とする。
  6. 『改善提案ニュース』『品質管理Gホームページ』、イントラネット上で、模範事例を紹介する。
  7. 『改善事例傑作集』ファイルを編集し、各現場の休憩室に設置する。
  8. 年間提出件数ベスト3の人を全体朝礼席上で表彰し、社内報に記事を掲載する。

 等々、思い付いたことは全てやっていました。自分で言うのも変ですが、正しく『改善提案活動の鬼』のような熱の入れようで、これだけやれば流石に活性化しますよね(笑)。しかもこれらの活性化活動は、大してお金を使っていません。活動活性化は事務局の熱意だけで充分なのです!!

 これらの活性化活動の結果、2つの部署で活動に火が着きました。撚合組と光デバイス課です。撚合組は現場上がりの技術員M君が上手に作業者の心をつかみ、心のこもったコメントと迅速な対応で活動を活性化してくれました。

 光デバイス課の方は、現場作業者が正社員・準社員・パート・派遣社員と混成部隊(95%が女性)で、それぞれ処遇が違うためベクトルが揃わず、職制を非常に悩ませていました。そこにこの活動を持ち込んだところ、パート・派遣社員の方が飛びついてくれました。最初は報奨金目当てだったようですが、「改善案を考え、自分で実施し、その成果を体感する」改善報告活動の魅力にはまり、最終的には達成感が目的となったようです。

 この職場では、職制や技術員も当活動に積極的に協力してくれ、一枚のシートに沢山のコメントを書いてくれました。シート上で論争が始まった事例もあり、こうなるともはや『改善シート』ではなく、現場と職制の『コミュニケーションツール』だなぁ、と感心したものです。当時の改善シートを見ながら、立派な改善ウーマンとなった女性作業者の皆さんの顔を思い出すと同時に、従業員の心をつかんだ活動のすごさを改めて認識させられました。

 御社の改善提案活動は、従業員が心から「やりたい活動」ですか?

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